25、26年の「淫行」事案全容判明 条例制定へ議論加速 長野

25、26年の「淫行」事案全容判明 条例制定へ議論加速 長野
産経新聞 2015年1月14日 7時55分配信

 県警が平成25〜26年に「淫行」と認定しながら、行為者を検挙できなかった子供の性被害16件19人の事案全容が判明したことで、淫行処罰の条例制定をめぐる議論の行方が注目される。全国の都道府県で唯一、淫行処罰の条例を持たず、青少年健全育成運動で対応してきた経緯から、条例制定に反対する声も根強いが、インターネットの普及など子供を取り巻く環境が激変し、子供が性被害に遭う危険性が増大していることから、条例制定を求める意見が急速に強まっている。

 県内では東御(とうみ)市が市町村で唯一、19年に淫行処罰規定を盛り込んだ青少年健全育成条例を制定。24年に同市内で中学と高校の教諭が女子高生に「みだらな行為をした」として相次いで逮捕されたことから、県も淫行処罰の条例を定めるべきだとして、議論が巻き起こった。

 このため、県は25年5月に有識者らによる「子どもを性被害等から守る専門委員会」を立ち上げ、議論を開始。同委員会は昨年3月、判断能力が成熟していない子供への真摯な恋愛ではない大人の性行為は「許されざる行為」と断じた報告書を、阿部守一知事に提出した。

 また、県の「青少年健全育成県民運動」を担ってきた「県青少年育成県民会議」も、子供を取り巻く環境の変化に対応するため検討チームを設置した。

 その結果、昨年8月に「子供の性被害が急増する現状において、条例制定が抜本的解決策とはいえないが、県民運動だけで子供を守るのは困難な状況にある」として、条例制定を求める報告書を阿部知事に提出した。

 これを受け、県は昨年11月、淫行禁止の条例化検討を含む「子どもを性被害から守るための取り組み」を策定。今後、法律の専門家からなる検討会を設置し、条例制定の是非をめぐる議論の判断材料となる条例のモデルを作成、県民から意見を広く募ることにしている。

 県は各都道府県の青少年健全育成条例を参考にしながら独自の条例のモデルを検討するが、淫行の定義は各都道府県で異なる。ちなみに県警が「淫行」の事例認定にあたって参考にした神奈川県の場合は、淫行について「みだらな行為」を「結婚を前提としない単に欲望を満たすために行う性交」、「わいせつな行為」を「いたずらに性欲を刺激し、または興奮させ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的羞恥、嫌悪の情を起こさせる行為」と定義している。

 こうした県の動きに対し、条例制定に反対する団体などは「長野県は家庭や学校、行政など地域一体で子供を性犯罪から守る取り組みをしてきた。そうした運動をさらに強化すべきで条例はいらない」「条例を制定すると未成年の真摯な恋愛に公権力が介入することになる」などと主張。県民の意見は割れている。

 しかし、インターネット上の掲示板などでは淫行処罰の条例がないことを前提に「女子中高生と遊ぶなら長野県」といった書き込みも散見され、淫行処罰規定を盛り込んだ条例の制定は「もはや待ったなし」との声が強まりつつある。

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