教え子殺人、引き金のもめ事に焦点 前園泰徳容疑者の動機解明進める

教え子殺人、引き金のもめ事に焦点 前園泰徳容疑者の動機解明進める
福井新聞ONLINE 2015年3月21日 7時50分配信

 教え子の女子大学院生を絞殺した疑いで福井大大学院特命准教授前園泰徳容疑者(42)=福井県勝山市=が逮捕された事件は21日、逮捕から1週間を迎える。2人に関係する「もめ事」が引き金になったとみられ、トラブルの解明が今後の捜査の焦点となる。一方、同容疑者は同市の教育や自然環境分野で4年にわたり活躍していた。環境施策をどう進めるかや、児童らの心のケアへの対応が急がれる。

 「知人女性が事故を起こした。女性の車を運転して病院に搬送している」。事件は12日朝、妻を通じた前園容疑者からの110番通報で発覚。東邦大大学院生菅原みわさん(25)=同市=の遺体に外傷はなく、車にも目立った傷はなかった。雪が積もる現場まで「歩いて助けに行った」と話す同容疑者がスリッパ姿だったことなど不審点が多く、福井県警は通報を虚偽だと判断して14日に逮捕した。

 同容疑者は2009年から東邦大の非常勤講師を務め、菅原さんと出会った。前後して勝山市に移住。菅原さんは同容疑者を師と仰いで赤トンボの研究を続け、ブログなどで尊敬の念や親しくしている様子をつづっていた。

 県警は同容疑者がスリッパ姿の軽装で、携帯電話以外にほぼ何も持っていなかったことなどから、何らかの緊急事態が生じたとみている。男女のもつれや「もめ事」があり、トラブル解決を図ろうと殺害に至った可能性があるとの見方を強めている。

 ただ、同容疑者は「(菅原さんに)殺してくれと言われた」との趣旨の供述をしたとされ、2人の体に争ったような痕跡がないなど不可解な点も残る。県警は、通報の際に虚言を述べた経緯を踏まえて事実関係を慎重に見極める方針。メールのやりとりや押収資料などの客観的な証拠を分析し、動機の解明を進める。

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 一方、前園容疑者は11年度から市環境保全推進コーディネーターを務め、市内の小中学生らに環境教育を指導していた。市では新年度も同容疑者と連携した教育や、赤トンボの生態を調査する市民参加型プロジェクトを予定していたといい、余波は大きい。

 市市民環境部は「プロジェクトは多分もうできないだろう」と声を落とす。「ただ、子どもや市民の環境意識は高まっている。施策をどのような形で継続するか模索したい」と対応に苦心している。

 同市は市内の公立全12小中学校が、河川の清掃や外来植物の駆除など特色ある環境活動を行っている全国的にまれな地域。市教委は「(同容疑者から)指導を受けた教員らが主導し、従来通り環境教育を進めたい」と話す。

 事件は子どもたちや保護者にも衝撃を与えた。ある児童の保護者によると、児童は同容疑者と菅原さんから授業を受けていて2人に親しみを持っていたという。クラスでも事件が話題になっており「子どもは『ショックだ』と言っていた」と明かす。

 「時間がたてば忘れると思っていてはいけない。行政は早急に子どもや保護者のケアをすべきだ」。別の児童の祖父は強く訴える。市教委は児童生徒への対応について教員の研修を行うとともに、カウンセリングにも力を入れるとしている。

福井新聞社

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