<福岡・高3自殺>いじめと因果関係明白…第三者委が報告書
毎日新聞2015年3月30日(月)22:00
福岡県内の私立高校3年の男子生徒(当時18歳)が2013年11月、いじめをうかがわせる書き込みを残して自殺した問題で、高校が設置した第三者委員会(委員長・伊藤巧示弁護士)は30日、調査報告書をまとめ、高校に提出した。報告書は生徒への14件のいじめを認定した上で「自殺との因果関係は明白に認められる」と指摘。高校に教諭間の連携強化などのいじめ防止策を提言した。
報告書の内容は、第三者委のメンバーと高校側の代理人弁護士が記者会見し、明らかにした。
報告書は、男子生徒が2年生になった12年5月以降、同級生からのいじめが少なくとも14件あったと認定した。内容は▽すれ違いざまに頭を思い切りたたかれる▽肩を殴られる(肩パン)▽画びょうを置いた椅子に座らされる▽粘着テープを体や口に巻かれる▽「ゲーム」として失神させられる−−などだった。
男子生徒はいじめが始まったとされる約1年半後に、福岡県春日市のマンションから飛び降り自殺した。報告書は自殺の約1カ月前から「ほぼ毎日のように殴られ(いじめが)ピークを迎えた」とし「絶望感や無力感に陥り、死を自ら選ばざるを得なかった」と、いじめとの因果関係を認めた。
報告書によると、男子生徒は12年6月に首をつって自殺を図っており、首に赤いあざができていた。教諭の1人が気付いていたが、他の教諭や高校の生徒健全育成委員会などに伝えておらず、第三者委は「情報の共有が不十分だった。自殺は防げた可能性がある」と指摘している。
報告書を受け、高校の学校長は「調査結果を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に向けた提言を実現できるように行動いたします」とコメントした。
第三者委のメンバーは▽臨床心理士▽教育心理専門の大学教授▽弁護士2人−−の計4人。うち弁護士1人は遺族側が推薦した。昨年3月から約1年かけて複数の同級生と教諭に聞き取り調査をしたほか、別の同級生23人にアンケートした。
この問題では、同級生の少年7人が福岡県警に暴力行為法違反容疑で書類送検され、福岡家裁は昨年8月、全員を不処分にした。【尾垣和幸、野呂賢治】
———
<福岡・高3自殺>第二の息子出さないで…遺族の手記・全文
毎日新聞2015年3月30日(月)22:02
自殺した福岡県の私立高校3年の男子生徒の遺族が、第三者委員会の報告を受けて30日に公表した手記の全文は次の通り。
◇ ◇
一昨年の11月14日、私たちの最愛の息子は、マンションから飛び降り、自らの命を絶ちました。わずか18歳の短い人生でした。
家では、いつもにこにこしていて、明るい優しい子でした。私たちは、叱った記憶すらありません。
あの子がどうして自殺しなければならなかったのか。
やっぱり、私たち家族がいけなかったのではないか。
自分たちを責め続ける日が始まりました。
あの子がどうして自殺しなければならなかったのか。
そのことを明らかにしてもらいたいとの思いで、第三者委員会の設置をお願いしました。
先ほど、委員会の方々から、報告を受けると共に、報告書をいただきました。
長期間にわたる、すさまじいいじめがあったと聞きました。
息子は、辛く、悔しくて悔しくてたまらなかったと思います。
一番楽しい時期であるはずの青春時代に、息子がいじめられていたなんて信じたくないと思っていましたが、報告書を受けて、真実を知ることができたことは良かったと思っています。
今回の事件が起きてから、周りから、いじめられる方にも原因がある、思春期だったからなどと言われたこともありました。励ましてくれる人もいましたが、そういう方と付き合うのも辛く感じ、周りの方に距離を置かれていくのを感じていました。
今回の報告書では、息子が自殺したのは、いじめが原因で、他に原因はないと書かれていました。他の事例などでは、いじめ以外の原因を指摘されることも多いと聞きますが、きちんと調査をしていただき、息子が死に追い詰められた原因がいじめだとはっきり認定していただいたことに感謝しています。
今でも、どうして気がついてやれなかったのかという思いは残り、自分を責める気持ちは消えません。しかし、報告書に、息子は悪くなかった、家族にも問題はなかったと書かれているのを見て、少し肩の荷が下りました。
また、同級生のアンケートなどに、息子は優しくて皆に好かれていたと書かれていたと聞き、少し救いになりました。
加害生徒に対しては、今は、私自身は、息子が亡くなったことの悲しみとかわいそうに思う気持ちでいっぱいで、責める気持ちにはなれません。
しかし、家族の中には、「目には目を」という気持ちだが、それができない以上、一生息子のことを忘れずに、責任を背負って生きていってほしいという厳しい考えを持っている者もいます。
加害生徒の責任の取り方については、家族で話し合って時間をかけてゆっくりと考えていきたいと思っています。
学校に対しては、初期対応が不十分で、いじめに対する認識や対応が甘かったと考えています。息子へのいじめはすべて学校内で起きていたことなので、気が付けたはずだと思います。命に関わる問題なのに真剣に受け止めていなかったのではないかと思います。
教師の考えや行動は、生徒の考えや行動に大きな影響を与えます。そのことに自覚を持ってもらい、生徒一人一人を平等な目で見て、細かく目配りしてほしいと思います。
保護者は、学校を信頼して子どもを預けています。まさか、学校内でいじめられて子どもが亡くなるなんて思いもよりません。
今後は、生徒のどんな些細なことでも保護者に報告するなど連携を取っていただきたいと思います。
また、学校で当たり前のように行われてきたこと、見過ごされてきたことが、第三者から見ればおかしいこと、間違っていることもたくさんあると思います。
今後は、学校だけで抱え込まずに、外部の目が入る仕組みや何かあったときに外部の機関と連携できる仕組みを整えるなど、具体的な行動を示してほしいと思っています。
いじめはどこにでも起こることです。いじめをなくすのは不可能ですが、いじめが起こったときに早期に発見して、適切な対応をして、二度と第二の息子を出さないようになることを願います。
また、世の中にはいじめの実態を知らない方もおられると思いますので、この報告書を公表するなどして、世の中に役立つように活用してほしいと思います。