教授が医大学長をパワハラで提訴へ、浜松医大
労基署、パワハラとPTSDの因果認定
2015年6月22日 池田宏之(m3.com編集部)
浜松医科大学(静岡県浜松市)の50代男性教授が、同大の中村達学長から、ポストや教育範囲を減らすように恫喝を受けるなどのパワーハラスメントがあったとして、7月にも、謝罪や慰謝料を求めて、静岡地裁浜松支部に民事訴訟を起こす方針を固めた。今年1月、中村氏のパワハラを訴え、浜松労働基準監督署から、PTSDを発症したとして労災の認定を受けているほか、大学も、男性教授を含む2人について、中村氏のパワハラを調査する委員会を立ち上げている。
男性教授によると、中村氏のパワハラは2005年ごろから始まり、准教授ポストや教育内容を減らされてきたほか、恫喝と受け止められる言動があったという。2014年4月に、中村氏と男性教授と面談した際には、中村氏は准教授のポストや教育範囲の減少、教室のスペースの明け渡しなどを求め、男性教授が固辞すると、中村氏は「みんなに認めてもらった」「准教授が辞めた際、別の准教授の任用を許可しない」旨の発言をして、恫喝したという。男性教授は、「准教授ポストを巡る発言は職権濫用」「10年以上保持してきたポストやスペース、仕事を奪われると知り、深い絶望に陥った」と訴えている。
男性教授は、PTSDと不眠症を発症し、2014年7月に浜松労基署に労災を申請。浜松労基署は、今年1月に、PTSDとパワハラの因果関係を認め、治療費の支払いを決めている。労災認定の詳細な事実関係は明らかになっていないが、厚生労働省が示している「精神障害の労災認定」では、「精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務よる強い心理的負担が認められること」を認定の基準として挙げていて、2014年4月の事実は、パワハラと認定された可能性が高い。その後、2015年5月にも、大学の理事から2014年4月と同様の内容について「決まった」との通告があり、男性教授は、2014年と同様の要求であることから、「中村氏の関与があるのではないか」としている。
男性教授は、パワハラを受けている理由について、中村氏と人事などを巡って考え方の違いが明らかになる中で、「気に入らない人物だとして狙われたのではないか」としている。男性教授は、2015年6月の時点で勤務を続けている。
男性教授は、7月にも、中村氏個人を相手どり、労基署によって認定された事実も含め、複数回にわたるパワハラがあったとして、慰謝料や謝罪を求めて民事訴訟を起こす方針を決め、弁護士などと相談しているという。
中村氏のパワハラを巡っては、男性教授以外にも、別の60代の男性教授が、「虚言の流布や恫喝などがあった」「60代男性教授の息のかかった人物を後任に選ばない旨の発言をした」と証言。2人は、同大のハラスメント委員会に対して、調査を求め、4月中旬に調査委員会の設置が決まった。2人は、調査委員会のパワハラの認定に中村氏が関与しないようにすることや、第三者の弁護士が入るように求めている。2人によると、大学は「弁護士などの第三者に入れたい」との方針を示しているという。中村氏は、パワハラの事実関係について、「調査委員会に任せていて、コメントを控えたい」と回答した。