長野県議会、子供を性被害から守る条例論議 深まらない議論、認識の違い
産経新聞 2015年10月7日 7時55分配信
制定の是非が焦点となっている子供を性被害から守る条例は、9月開会の定例県議会で主要な論戦の一つになっている。一般質問に続き、5日から始まった県民文化健康福祉委員会でも委員長を除く委員全員が、条例制定の問題を取り上げ、賛否それぞれの立場から自説を主張し、県側の姿勢をただした。質問の中には、子供たちをめぐる社会環境に対する認識の違いも見られ、議論を深めていくことの難しさが浮き彫りとなった。(太田浩信)
◆急速な変化指摘
「条例をつくることによって何らかの権利を侵す可能性が高いと思っていたが、現在の情報化社会と、親が思っている状況との間に深い溝がある。ここ2、3年で急速に変わってきている」
こう切り出したのは高島陽子議員(無所属)。インターネットやスマートフォンなど情報通信機器の急速な普及で、子供たちをめぐる環境がめまぐるしく変化していることに言及した。
思春期の子供がいる高島氏は、「子供たちが夜、コンビニにたむろしているのは、無料でWi−Fiにつなげることができる環境を利用し、そこで暴力的なゲームや性表現に触れ、交友関係を広げている」と警鐘を鳴らした。
青少年へのみだらな性行為・わいせつな行為を禁じた青少年健全育成条例がある東御市選出の石和大議員(信州・新風・みらい)は、子供が深夜に外出しておかしいと思わなくなっているように、「家庭力」が低下している現状を指摘。青少年健全育成に携わる6団体が条例制定を求める要望書を提出した背景を、「情報機器の普及で社会に変化が起きているからだ」と述べ、「ネット上に『長野県を狙え』との書き込みが氾濫している。性被害に遭った子供たちが泣き寝入りすることがあってはならない」と訴えた。
◆なぜ今なのか
一方、垣内基良議員(自民党県議団)は「条例制定ありきの既成事実づくりだ。ネットなんて今に始まった話ではない」と批判した。これに対し、県側の山本京子こども・若者担当部長は、児童相談所で多くの子供の性被害に携わってきた経験を語り「情報社会のなかでじわじわと変わってきているのは事実。親が子供を指導できなくなり、子供たちだけの社会を築いていることを実感している」と答えた。
また、垣内氏は「阿部守一知事の一般質問に対する答弁が議員によって異なってきている」とも指摘したが、青木弘県民文化部長は「表現の短い答弁はあったが、知事のスタンス、答弁の内容は変わっていない」と強調した。条例制定について「知事は進め方の姿勢を変えた」とした信濃毎日新聞の報道もあるなか、知事の方針転換を否定した。
また、さらに明確な反対姿勢を示したのは山口典久議員(共産党県議団)だ。現行法で捜査対象とならないとして県警が示した17事例を挙げ、「感じたのは、まずインターネットの危険を教えるべきだ。条例に処罰規定があることによって、子供の性被害の根本的な抑制にはつながらない。深夜外出の制限が盛り込まれるが、監視社会が進行することになる」と反対論をぶった。
質問した議員の中には、「淫行」の定義や摘発の対象となる犯罪の構成要件に関する質問も少なくなく、意見の相違とともに議会内でまだ議論が深まっていない現状を露呈させた。若い世代も含めた丁寧な県民の意見交換を求める議論に加え、分かりやすい資料の作成を求める意見も出されていた。
議論の方向がおかしい。
条例ができないと加害者を警察が摘発できません。
摘発できないと被害者が増えます。
条例を作らないということは、犯罪であるとみなさないし処罰する必要がないと判断するいうことです。
そんなこともわからないのか、それともわかって反対しているのか。