「教員の暴力に歯止めを」 桜宮高自殺3年、両親の願い

「教員の暴力に歯止めを」 桜宮高自殺3年、両親の願い
長野佑介
朝日新聞 2015年12月21日12時45分

 大阪市立桜宮高校バスケットボール部の主将だった男子生徒(当時17)が元顧問(49)から暴力を受けて自殺した事件から、23日で3年になる。大阪市を相手取った損害賠償請求訴訟の判決を来年2月に控え、両親は「事件が風化していくなか、教員の暴力の歯止めになる判決を」と願う。

 「まだ3年というより、もう3年という気持ち。事件が教訓として学校現場に残っているのか」と生徒の父親(46)は言う。

 市教委は8月、市立学校の教員による2014年度の体罰・暴力行為の報告件数が、事件が起きた12年度から5分の1に減ったと発表した。だが、14年度には市立中3校のバスケ部が元顧問を指導に招いていた。

 「数字上は減っても『保護者の目が厳しい今は暴力は控えよう』としか思っていない教員が多いのでは」と母親(47)。「学校現場が『暴力は絶対にだめだ』という意識に変わらなければ、また犠牲者が出てしまう」

 両親らは13年12月、「必要な措置を講じたならば元顧問による生徒への暴力はなかった」として、大阪市への損害賠償を求め東京地裁に提訴。市側は生徒の自殺は予想できなかったと反論、双方の主張は平行線のままだ。元顧問は今年6月の証人尋問で「過去、十数人に同じようなことをしてきた。自殺の原因はわからない」と証言。暴力と自殺の因果関係を認めなかった。

 両親は「息子も直接、元顧問の思いを聴きたいはず」と法廷に遺骨を持参してきた。元顧問は2年前の刑事裁判で、法廷に入ると両親に深く一礼した。しかし今回の民事裁判では視線を合わさなかったという。

 「息子とずっと一緒にいたい」と、納骨はしていない。生きていれば、いま20歳。酒は飲めるか。運転免許は取ったか。一緒にドライブできるか。居間の仏壇を前に、毎日語りかける。

 判決は来年2月24日。「大阪市に厳しい判決が下れば、教員の暴力に歯止めがかかるはず」と期待する。(長野佑介)

     ◇

 〈桜宮高校の暴力事件〉 2012年12月、バスケ部の主将だった男子生徒が自宅で首をつり自殺した。元顧問は生徒に繰り返した暴力が自殺の大きな要因になったとして懲戒免職となり、13年9月に傷害と暴行の罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けた。同12月、両親ら遺族は大阪市を相手取り提訴。市は事件後、市立全校の部活動から暴力をなくす指導指針を決定。「勝利至上主義」ではなく「生徒第一主義」と明記し、暴力を把握する外部通報窓口も新設した。

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