日経に劇画新連載小池一夫
第二の小室で訴えられる
週刊文春 2009年6月11日
「日経新聞初の劇画連載」として、五月三十日に鳴り物入りでスタートした「結(ゆ)い 親鸞」。原作は『子連れ狼』で知られる重鎮・小池一夫氏(73)だが、この新連載に対して早くも不安の声が上がっている。
日経新聞若手社員が嘆息する。
「二十代の若い読者を増やそうと始めた『U-29』というページでの連載なのですが、親鸞聖人が題材、劇画調の古い画風、どこが若者向けなんでしょうか」
企画の是非はともかく、他にも問題があるという。
出版関係者が解説する。
「実は小池氏は昨年、今までの著作と今後製作する著作物の独占的な使用権を、旧知の実業家A氏が社長を務める会社に数億円で譲っています。それなのに、今回の日経の新連載はその会社を通していない。訴訟沙汰に発展する可能性が非常に高いのです」
日経は〈単行本の出版や電子媒体での掲載も視野に、総合的な展開も検討しています〉と紙面で発表しているが、そうした二次使用の権利もA氏の会社が所有しているはずだという。
小池氏とA氏は約二十年前に知り合い、一昨年からビジネス上の取引が始まった。A氏が経緯を語る。
「〇七年の三月に小池氏から『自分の著作の権利を数十億円でソフトバンクの孫正義社長に譲ろうと思ったが、弟子たちが反対している。ついてはあなたに約十分の一の値段でいいから権利を譲りたい』と話がありました。私は漫画には素人なので断ったのですが、小池氏が『頼る先が他にないんだ』と懇願してきたので、一ヶ月考えた後に権利を取得しました」
A氏は小池氏を役員に加えた新会社「小池一夫劇画村塾(株)」を設立。まずパチンコ台へのキャラクター提供ビジネスを手がけようとしたが、その権利は小池氏がすでに別会社と契約済みだとわかった。その後、さらなる障害にぶつかる。
「小池氏は〇八年五月に角川書店に対し、過去の著作物の著作権を五千万円で譲渡したのです。もちろん、角川書店はA氏の会社との契約があることを知らずに契約しています。小池氏は『自分が身につけている衣服装飾品の総額は一億円』と語るなど派手な生活を送っており、金銭的に苦しかったのでは」(事情通)
A氏の会社が取得したのは「独占的な使用権」で、角川書店は「著作権」と名称は異なるが、著作権に詳しい弁護士は「二つの契約は抵触するものであり、問題がある」と語る。
「これは権利の二重売買にあたり、民事と刑事両方で問える可能性がある。日経の新連載も、小池氏の今後の著作の独占的な使用権を有しているA氏の会社を通していないならば、小池氏は契約違反にあたります」
しばらくしてA氏も、小池氏と角川書店の契約を知ったという。
「これは昨年の、小室哲哉さんの著作権二重譲渡と同じ構図だと思います。他にも犠牲者がいるのではないかと、それも心配です」
小池氏に問うたところ、
「A氏の会社との契約は(小池作品の使用に関して)期間の定めのないこと、対価の支払いのないこと、将来の一切の作品を対象としていることなどから、公序良俗に違反する契約として元来無効なものであり、昨年十一月二十六日付け内容証明郵便で解除されている。よって角川書店との契約とは重複しない」
と回答を寄せた。
A氏が反論する。
「権利の譲渡はもともと小池氏側からもちかけてきた話であるうえに、契約解除といいながら小池氏に支払った数億円は返還されていない。また、契約解除を求める内容証明を送ってきたのも小池氏が角川書店と契約した後です。一方的に契約解除と言われても、困惑するばかりです」
日経新聞に契約問題について指摘したところ、「現在調べております」(日本経済新聞社広報グループ)と答えるにとどまった。
前出の出版関係者が語る。
「小池氏は他にも『子連れ狼』など過去の作品の二次利用に関して、作画者側と金銭的にもめている案件がある。そうした権利関係をめぐって近々、小池氏を提訴しようとしている人間もいます」
小池氏は新連載のタイトル「結い」という言葉に「人は皆どこかで、かならずつながっていて、終わりが無い」という意味を込めたというが、権利関係とトラブルも終わりが無さそうである。
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