<司法試験漏えい>元教授に有罪判決 東京地裁
毎日新聞 2015年12月24日(木)11時55分配信
司法試験の問題を教え子の女性受験生に漏えいしたとして国家公務員法(守秘義務)違反に問われた明治大法科大学院元教授、青柳幸一被告(67)=懲戒免職=に対し、東京地裁は24日、懲役1年、執行猶予5年(求刑・懲役1年)の判決を言い渡した。野沢晃一裁判官は「司法試験の公正さに対する信頼が大きく害された」と述べた。
判決は「司法試験考査委員の立場にありながら、交際していた受験生を合格させるために自ら進んで漏えいに及び、経緯や動機に酌むべきものはない」と指摘。漏えい方法も「問題を複数回にわたり繰り返し示し、解かせて指導した。範囲や程度も大きく、採点過程で発覚した点を踏まえても重大な犯行」と厳しく非難した。
一方で「漏えいの相手は1人で、そこからさらに漏れた形跡はみられない。事実を認め反省し、失職など社会的制裁を受けている」などと執行猶予の理由を説明した。
濃紺のスーツにネクタイ姿で入廷した青柳被告は何度も小さくうなずき、時折大きく深呼吸しながら判決に耳を傾けた。
判決によると、青柳被告は非常勤の国家公務員である司法試験考査委員として今年5月に実施された司法試験で問題作成を担当。2月上旬〜5月上旬、明治大法科大学院生だった20代の女性受験生に、憲法分野の短答式と論文式の問題を数回にわたって漏らした。
受験生の論文の答案はほぼ満点だった。採点した別の考査委員が不審に思い、法務省の調査に青柳被告と受験生が漏えいを認めたため、法務省は9月、被告を考査委員から解任して告発。東京地検特捜部は青柳被告を在宅起訴する一方、受験生については漏えいを働きかけた事実はないとして立件を見送った。
被告は10日の初公判で「間違いありません」と起訴内容を認め、被告人質問で「試験に落ちて泣いている受験生を見て、何とかしたいと思った。人間として愚かさを痛感している」と語っていた。
【近松仁太郎】