市に認可責任、対応急務 伊賀の青山学園不正疑惑
中日新聞 2016年2月8日
就学支援金を不正受給した疑いで東京地検特捜部から家宅捜索を受けた伊賀市のウィッツ青山学園高校。疑惑が表面化してから約2カ月が過ぎたが、真相解明には至っていない。学校運営や教育内容の問題も浮かび上がり、設置認可者の市の対応も問われる。株式会社が運営する高校には21人の全日制生徒と1100人の通信制生徒が在学する(昨年11月末現在)。学校はどうなるのか。市は実態調査と対応を急ぐ。
昨年十二月、山あいの静かな環境にある学校に報道陣が押し寄せた。特捜部とみられるスーツ姿の男性が出入りし、教員は校舎が見えないよう布で目隠しをした。家宅捜索の翌日、会見した市教委の担当者は「利益を追求する株式会社が教育と合うのか疑問だった」と運営を不安視していたことを明かした。
市教委は問題が明るみに出た後、全国にある通信制の支援教室「LETSキャンパス」に電子メールで教育実態を調査した。
株式会社による学校運営を認めた伊賀市の教育特区では、法律上、リポートの添削やテストの採点、スクーリング(面接指導)は特区内で行わなければいけない。市外の支援教室は対象外で、分校ですらない。調査結果によると実態は異なり、特区外でするなど不適切な事例があった。
担当者は「学校に向かうバスの中で邦画を見たら国語の単位、洋画を見たら英語の単位としていた可能性もある」と指摘する。疑惑発覚後、市教委職員が東京など四教室を訪れると、スタッフの数や施設の小ささに疑問を感じるところもあったという。担当者は「これが教育なのかという事例もある。認識が甘かった」と話す。
市はこれまで高校の指導に精通した職員を配置していなかった。今後、監督強化のため高校の学校長経験者や通信制学校での勤務経験者を嘱託職員に任用する方針。学校設置基準や審議会の審議案件、委員数の見直しなどにも乗り出す。
市は運営会社に改善計画も求めた。今年に入って提出されたが複数の不備があり、再提出を命じた。会社側は「学校法人化を目指す」と昨年末に公表したが、具体的な手法やスケジュールはまだ明らかになっていない。
岡本栄市長は二日の定例記者会見で学校について「大事なことは学びたい意欲が本当にある人たちをどう受け止め、意欲をつないでいくか。設置認可者としての、それが責任」と語気を強めた。
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教育特区は市町村合併の直前に旧青山町が国に申請し、「伊賀市」になってから認可された。市が学校の設置認可をして二〇〇五年、株式会社「ウィッツ」が運営する学校が誕生した。
通信制の定員は当初の六百人から九百人、さらに千二百人にまで拡大。市の審議会では「教育の場が利益追求の場にならないように」と指摘する声も出ていた。通信制の生徒は当初の二倍にまで膨れ上がり、全国各地に「LETSキャンパス」と呼ばれる支援教室ができた。
一四年には寮生がガスボンベによる事故で死亡。昨年十一月には、非常勤講師の免許が失効していたことによる単位未履修問題が判明している。
不正受給容疑について、ウィッツの親会社「東理ホールディングス」は東京のLETSキャンパスに所属していた五人が関わっていると明らかにしている。
(中山梓)