「子連れ狼」小池一夫が持ち歩く「オイシイ話」
週刊文春 2009年4月23日
「冥府魔道」を歩む刺客・拝(おがみ)一刀と、「父(ちゃん)!」の大五郎でおなじみの時代劇画『子連れ狼』は累計一千万部のベストセラー。萬屋錦之介、高橋英樹、北大路欣也主演で映像化もされてきた。この原作者の小池一夫氏(72)がある“投資話”を持ち歩いているという――。
大手出版社社員が語る。
「梶原一騎とならぶ超大御所原作者の小池一夫先生みずから『儲けさせてやるぞ!』と弟子たちに電話して、一口一千万の出資を募っているんです。それがズバリ『子連れ狼』のアニメ化。アメリカ進出も考えているとかで、約五億円の資金の半分を自ら用意するそうですが、そもそも、アニメ化で原作者が資金集めをするケースは聞いたことがありません」
小池氏は後進育成のため七七年に「小池一夫劇画村塾」を設立し、『うる星やつら』の高橋留美子氏や『北斗の拳』の原哲夫氏など、有名作家を輩出している。
さっそく弟子筋に訊ねてみると、高橋留美子氏は「小池先生からアニメ化の連絡はあり、キャラクターデザインを『どう思う?』と見せていただいた」が、出資はしなかったという。
ゲーム『桃太郎電鉄』で知られる作家さくまあきら氏は、出資に応じた。
「出資話は昨年の秋冬頃にありました。前々から計画は聞いていましたが、これは本気だなと。どういう絵になるか楽しみです。早くやってもらいたいですね」
ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの原作者の堀井雄二氏も出資した一人。
「上映したら絶対に儲かるから、それに合わせてファンドを作る、みたいな話だった。まあ、世話になった先生の言うことだからしょうがないなって(笑)」
さすがに大ヒット作家たちは太っ腹なのだが、計画を心配する声もある。
「連絡を受けた漫画家の一人は、『まずカネは返ってこないよなあ』と困惑していましたし、資金が足りないのか、一千万円など出せないクラスの作家にも声がかかっている」(前出・大手出版社社員)
元担当のベテラン編集者も首をかしげる。
「先生は小池書院という出版社を作り、代表取締役会長ですが、刊行するコミック誌が昨年休刊するなど苦境です。金のかかるアニメは難しいのでは……」
�蠑�池書院はゴルフ雑誌「アルバトロス・ビュー」(現「ALBA」)を〇五年に他社に譲渡。〇六年にはパチンコメーカーの�衒刃造�株式の約八割を取得し非連結子会社となった(現在、株式は小池書院側に戻る)。また、小池氏が所有する秋田の土地には、ここ二年で約二億五千万円の抵当権が設定されている。
出版不況に加えて、アニメ化に思わぬ逆風も。
「折からの世界同時不況で、大口スポンサーの資金提供の話が消えたのです。今年の暮れにアニメ化の予定でしたが、延期もありえます」(小池書院関係者)
はたして売れっ子作家から集めた資金はどうなるのか。小池氏に訊ねた。
「『子連れ狼』アニメ化は小池書院の事業でなく、小池個人と一門の有志によるもので、現在はスポンサー探しと同時に、キャラクターやシナリオ製作等を進行中です。お預かりした出資金は、プロジェクト継続中のため、製作経費として使われています。
出資者である弟子に『儲けさせてやる』とは言っていません。関係は良好で、ご心配されるようなことはない」という小池氏。
大五郎のごとく「父(ちゃん)!」と慕う弟子には事欠かないようで何よりである。
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