<阪大汚職>さらに多額の振り込み 大半は研究に使われず
毎日新聞 2016/11/19(土) 15:00配信
大阪大と企業の共同研究を巡る汚職事件で、収賄容疑で逮捕された同大大学院教授の倉本洋容疑者(57)の妻が代表を務める法人と容疑者本人の二つの口座には、贈賄側の建設会社2社から、賄賂とみられる約210万円以外にも多額の研究費用が振り込まれていたことが19日、捜査関係者への取材で分かった。だが、入金された研究費の大半は研究に使われず、実際には大学から支出される公費などで賄われていたという。府警は倉本容疑者が両社から支出された研究費を不法に取得したとみて捜査している。
捜査関係者によると、倉本容疑者は2013年度以降、贈賄側の「東亜建設工業」主任研究員の樋渡(ひわたし)健(43)と「飛島建設」担当部長の久保田雅春(57)の両容疑者と、耐震技術の共同研究を大学に無断で進めている。
本来は大学側と企業が共同研究契約を結び、原則的に企業側が研究費用を大学事務局に納める決まりになっている。だが、大学に無断で行った共同研究のため、倉本容疑者は振込先に妻が代表の「CES構造研究所」(愛知県豊橋市)の口座と自分の個人口座を指定し、2社に研究費用を入金させたとみられる。このうち、倉本容疑者が先物取引などに使った約210万円が賄賂と判断された。
研究には実験の材料費やデータ解析費などの必要経費がかかるが、13〜16年度分の研究費として2口座からはほとんど出金されておらず、実際にかかった費用は国から大学に配分される交付金などで賄われた。
研究には贈賄側の容疑者2人の他、倉本容疑者の研究室のメンバーらも参加。3本の学術論文が出されたが、正式な共同研究でないためか、贈賄容疑者2人の名前は執筆者になかった。
一方、倉本容疑者は11〜12年度、大学に申請して2社と正式に共同研究を実施。2年分の研究費の総額計約2000万円のうち、2社が400万円ずつ計800万円を負担し、残りは国土交通省の補助金などが投入された。
府警は倉本容疑者が13年度以降の共同研究を大学に無断で実施するよう、贈賄側に持ちかけたとみている。当初から研究費そのものを不正に取得する狙いがあった可能性もあるという。ある府警幹部は「共同研究を装ってはいるが、企業からの研究費を不正に取得しており、丸もうけの状態だ」と指摘する。【池田知広、戸上文恵】