山形大生アカハラで自殺 1年半以上公表せず 遺族は大学側を提訴

山形大生アカハラで自殺 1年半以上公表せず 遺族は大学側を提訴
河北新報 2017/8/4(金) 11:43配信

 山形大工学部(米沢市)の男子学生が2015年11月、指導教員の40代の男性助教のアカデミックハラスメント(アカハラ)を苦に自殺していたことが3日、分かった。大学が設置した第三者調査委員会は自殺とアカハラの因果関係を認定。大学は約1年後に助教を停職の懲戒処分としたが、学生の自殺は公表しなかった。

 学生の両親は助教と大学に計約1億1900万円の損害賠償を求め、山形地裁に提訴。先月25日の第1回口頭弁論で、第三者委の調査報告書を証拠として提出した。助教と大学はともに答弁書で争う姿勢を示し、大学側は「(報告書の内容は)そのまま大学の判断となるものではない」などと反論した。

 両親の訴えによると、当時4年の学生は自殺の直前、スマートフォンに「助教を恨んでいる」という趣旨のメモを残していた。両親は自殺前、工学部の後援会や保護者会などで学生が悩んでいる様子を学部長ら複数の教員に相談したが、大学側から適切な対応はなかったとしている。

 大学は両親の求めで、外部委員4人による「工学部キャンパス・ハラスメント防止対策委員会調査委員会」を設置。調査委は16年6月、(1)助教によるアカハラがあった(2)自殺とアカハラには因果関係がある(3)大学は学生の自殺前、両親の相談に対処しなかった−との報告書を作成した。

 大学は16年10月、助教が研究室の複数の学生に長時間、説教をしたり、不機嫌な態度を示したりする行為を日常的に繰り返したとして停職1カ月の懲戒処分とした。処分の発表時、学生が自殺したことやアカハラ発覚の経緯は伏せられた。

 小山清人学長は「自殺に関しては個人情報保護の観点から非公表とした」と説明。報告書の指摘や大学側の責任の有無については「ノーコメント」とした。

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<山形大アカハラ自殺>学長「一般論としては申し訳ない」
河北新報 2017/8/4(金) 11:43配信

 「一般論としては申し訳ない」「規則に従って非公表」−。アカデミックハラスメントを受けた男子学生の自殺について、山形大の小山清人学長は3日の定例記者会見で、質問した記者たちも首をかしげるような答えを連発した。

 学生の自殺や助教の実名を公表しなかった理由を「個人情報保護が最重要」と説明。だが、「保護すべき個人情報は助教か学生か」との質問には「ノーコメント」と口をつぐんだ。

 自殺した学生の両親への思いを問われると、「一般論として学生が亡くなったことについて申し訳ない。裁判の話とは別個。一般論としては申し訳ないと思っている」と話した。

 山形大では2004年8〜10月、報道機関の情報開示請求などで教職員によるセクシュアルハラスメント6件が相次いで発覚。再発防止のため、重大事案は学長判断で被処分者を実名公表できるとした「キャンパスハラスメントの防止等に関する規則」を策定した。

 ところが、小山学長は助教を懲戒処分とした際に匿名で発表した理由を「規則に従った」と言うだけで、実名公表しない理由への言及を避けた。

 学生の命を守り切れなかったことに関しては、「学長の責任はケース・バイ・ケース。裁判で大学に責任があるとされれば(学長にも)責任があると思う」との考えを示した。

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<山形大アカハラ自殺>非公表は「時代錯誤」学生ら、大学の姿勢疑問視
河北新報 2017/8/4(金) 11:43配信

 アカデミックハラスメントが原因で山形大工学部の男子学生が自殺した問題で、同大の学生たちからは3日、自殺した学生を悼むとともに、情報公開に消極的な大学の姿勢を疑問視する声が上がった。

 大学は助教の懲戒処分を発表した際にも学生の自殺を伏せ、1年半余り明らかにしなかった。工学部3年の女子学生(21)は「今どき隠そうとするのは時代錯誤。研究成果のようないいことばかり公表して、嫌なことは表に出さないという姿勢はいかがなものか」と対応を疑問視した。

 「自殺について全く知らなかった」と話すのは工学部2年の男子学生(19)。大学は今後の学生への説明に関し、訴訟の判決を踏まえて判断する方針を示しているが、「裁判になる前に事実関係は公表すべきだ。事実だとしたら、自殺した学生が気の毒すぎる」と思いやった。

 大学が学生の自殺を防げなかったことへの懸念も広がる。医学部1年の女子学生(19)は「とてもショック。大学には自殺を未然に防ぐ対応を取ってほしい」と訴えた。

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