いじめ自殺 真実解明を 重い1年 遺族、悲しみ深く/青森
デーリー東北新聞社 2017/8/19(土) 15:00配信
昨年8月、青森県内で2人の中学生の命が失われた。いじめに悩み苦しんだという「遺書」を残し、自らの手によって絶たれた若く尊い命。「心に穴があいたようだ」「(過ぎた時間に対する)感覚がない」。最愛のわが子を失った親の深い悲しみと心の傷は、悲しい別れから1年がたつ今も癒えていない。「真実を明らかにしてほしい」。残された悲痛なメッセージを受け取った遺族は、わが子のため、そして二度と悲劇が繰り返されないように、いじめ問題の解明を望んでいる。
■再調査求めた両親「心に穴」
夏休みの終わりが目前に迫った昨年8月19日。絶望にとらわれた遺族にとって、流れた1年の月日は「心に大きな穴があいたようで、時間が止まっていた」(父親)。苦しみと共に日々を過ごす両親の胸の中にあるのは、「遺書に残されていた『いじめ』の事実、学校側に態勢の不備がなかったかなど、本当のことが明らかになってほしい」との思いばかりだ。
自宅の小屋で自らの命を絶った生徒。「いじめがなければ“もっと”生きていたのにね、ざんねん」。生徒が残したのは、いじめの被害に遭っていたことなどを記した、遺書とみられる自筆の書き置きだった。
町教委は昨年9月、町いじめ防止対策審議会を組織し、調査を実施。だが、12月に出た結論は、いじめの存在を認めながらも、自殺との直接的な結び付きを否定するものだった。「反論の場も設けられないまま、結論を出されてがっかりした」。母親は、遺族として納得できない結果を示された当時の心境を明かす。
両親は今年1月、町に対し再調査実施を要望。これを受け、3月に第三者で構成する再調査委員会が発足した。調査が再び動きだした時、母親は「ちゃんと息子の気持ちを聞いてもらえるように頑張らないと」と決意を固めたという。
再調査委は、前回調査の妥当性を検証するとともに、遺族や学校の教諭らから聞き取りを行うなどして、自殺といじめの因果関係を調べている。父親は「経過の報告を受けたり、調査の進め方に意見を求められたりと、驚くこともある」と、遺族に寄り添うように努める姿勢を評価する。
再調査委は現在、10月中の報告書案作成を目指す。案がまとまり次第、遺族に提示する方針で、納得を得られない場合は修正も検討するという。
「(調査対象者が)本当のことを言い、真実が明らかになってほしい」。両親はこの一心で、調査の推移を見守っている。
■父「一周忌って言わないで」
遺族は今も悲しみとつらさを抱えながら、りまさんのため、これからの子どもたちの命を守るために、自殺の背景を明らかにしたいと、市教委の審議会によるいじめ調査と向き合う。
「一周忌って言わないでほしい。本当なら25日はただの日。節目でも何でもない」。父親の剛さん(39)は、市内の自宅で胸の内を明かした。
りまさんが亡くなったのは昨年8月25日朝。無料通信アプリを介した同級生からの悪口などに思い悩んだ末の行動だった―と遺族は訴える。
前年から心ない悪口に苦しんでいた。スマートフォンに残された「遺書」には、いじめたとされる生徒らの名前や苦悩に満ちた言葉と共に、家族や友人への感謝がつづられていた。
突然の別れから1年近く経過する。剛さんは「あっという間なのか、長かったのか、まるで感覚がない」と力なく語る。
「昨年の今ごろはこうだったとか、何をしていたとか、昨年と今を比べてしまう」。8月の日付を見たくないとの思いから、部屋のカレンダーは既に9月だ。
かけがえのない命が失われたことを受け、市教委は昨年9月、弁護士や医師らで構成する「市いじめ防止対策審議会」を設置。審議会はいじめがあったと認定したが、最終段階の報告書案には、自殺の原因に「思春期うつ」が挙げられた。
審議会の見解に対し、剛さんらは「納得できない」と訴え、構成委員の交代を含めて再調査を求めた。現在、市教委が人選を進めており、出直しを待つ。
「憎しみだけの行動を、りまはきっと望まない。これからの子たちのためにも事実を解明したい」
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