<川口いじめ>信じて再び登校したのに…不登校生徒に示した「今後の支援」共有されず 母が抗議、教頭反論
埼玉新聞 2018/2/27(火) 23:14配信
クラブ活動の部員からのいじめやインターネットの中傷の書き込みなどを苦にして、埼玉県川口市立中学3年の男子生徒(15)が不登校になっている問題で、不登校から復帰した男子生徒と母親に校長から示された「○○君の今後の支援体制」とする文書が、今年2月1日まで約1年間にわたり現場の教諭らに周知されていなかったことが分かった。母親は「学校全体で共有していると信じていたのに残念だ。学校への不信感を深めた」と話している。
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「支援体制」の文書はA4判1枚。昨年4月の保護者会や生徒集会でいじめ防止を指導し、教職員のいじめ防止の研修を実施するほか、被害生徒に対しては学習支援策、保護者と学校の交換ノート実施、進路へ向けた情報提供など5項目を列記した。
母親は「息子はこの約束があるから学校を信じて登校を再開したのに、一向にいじめが減らず変だと思っていた。学校内で問題が共有されなかったことを知って、息子は傷ついている」と話している。
男子生徒は、校長が「先生たちがしっかり対策を取る」とした約束に期待して登校を再開しただけに、精神的なショックは大きいという。
男子生徒は2年生の2学期が始まった2016年9月、クラブ員らからのいじめを苦に自傷行為をして、それ以降は長期間の不登校になった。3年生の新学期直前の昨年3月28日、校長が男子生徒と母親を学校に呼び「支援体制」の文書を手渡した。
母親が男子生徒に「校長先生たちがちゃんとやってくれると言っているよ」と励ますと、男子生徒は「信じて明日から学校へ行く」と答えたという。昨年4月10日、新学期が始まり登校したが、クラブ員のいじめはやまなかった。
今年2月1日、男子生徒の家庭を訪問した学年主任の教諭と市教委の担当者に、母親が「支援体制」の文書を見せて「学校はこのうちの一つでも実行したのか」と抗議したところ、学年主任は「この文書は見たことがない」と驚いた様子だったという。
学校に戻った学年主任は、3年生の担任らを集めて会議を開いて確認したが、「支援体制」文書について誰も知らず、共有されていなかった。
母親は「文書を作ってから1年もたっているのに、先生たちが誰も知らないなんて、ひどい話」と語る。学年主任から「卒業までは3年生の先生たちでしっかり守るから、学校に出ておいで」と言われてきたが、男子生徒は母親に「また校長先生や教頭先生と同じうそをつくのではないか、もう学校へは行かない」と話しているという。
教頭は26日、埼玉新聞の取材に対し、「支援体制」の文書について「先生たちには見せていない」と認めたが、「内容に書かれてある個別の支援やいじめ防止の活動はその都度、必要な時に教諭に指示してきた」と反論している。