<山形大アカハラ自殺>第三者調査委の報告書、信用性が争点
河北新報 2018/7/24(火) 11:27配信
山形大工学部(米沢市)の男子学生が自殺したのは助教によるアカデミックハラスメント(アカハラ)が原因だとして、遺族が大学と助教に計約1億1900万円の損害賠償を求めた訴訟は25日、第1回口頭弁論から1年となる。アカハラと自殺との因果関係を認めた第三者調査委員会による調査結果の信用性が最大の争点となっている。
遺族側は昨年5月、自殺の法的責任は大学と助教にあるとして山形地裁に提訴。第三者調査委の報告書を証拠として提出した。
報告書は、助教の機嫌を損ねると叱責(しっせき)や人格を否定するような発言を浴びせられる危険があると感じながら、研究室で長い時間を共にしていたことから「延々と続くストレス」が自殺の原因になった可能性を強く指摘していた。
これについて、大学側は「そのまま大学の判断とはならない」「因果関係を認定することまではできない」などと反論。根拠として2016年10月にアカハラ問題で助教を停職1カ月とした際の懲戒処分書を提出した。
懲戒処分書は調査委から報告書を受理した後、大学が役員会の審議を経て作成。「(自殺の2日前に)助教から厳しい叱責を受け、将来を悲観して自殺を選択した可能性が高いと推察される」と結論付けた。
大学側は訴訟で、懲戒処分書からも「ハラスメント行為以上の詳細な事実関係は不明」と説明。「調査委の調査報告書を併せて検討しても、因果関係を認定できない」と主張した。
一方、遺族側は懲戒処分を決めるに当たり、大学は理事と総務部長が助教や学部長ら教員数人を聴取しただけで「(事実認定の)相当部分を調査委の報告書に頼っている」と強調。
調査委は外部有識者4人で構成され、聞き取りの対象も両親や研究室の学生ら広く関係者を網羅しているとして、その判断は「信用性がある」と訴えている。次回の弁論準備手続きは8月28日。
[山形大アカハラ自殺問題]工学部の4年生だった男子学生が2015年11月、指導教員だった40代の男性助教を「恨んでいる」とのメモをスマートフォンに残して自殺。16年6月、第三者調査委員会は助教によるアカハラと自殺との因果関係を認める報告書を作成した。報告書によると、両親から相談を受けた複数の教員が、相談内容を学内のハラスメント担当者に伝えなかったことなど、大学のずさんな対応も明らかになっている。