いじめ問題で川口市の不手際続々 再調査判断を放置、所見未読

いじめ問題で川口市の不手際続々 再調査判断を放置、所見未読
産経新聞 2018/11/9(金) 7:55配信

 現在、高校1年の男子生徒(16)が川口市立中学校時代にいじめや体罰を苦に不登校になった問題で、市側の不手際が次々と明らかになってきた。市教育委員会の「第三者委員会」が今年3月にまとめた報告書を踏まえ、再調査するかの判断を約8カ月も“放置”するなど、市側のずさんな対応に男子生徒側は批判を強めている。(大楽和範)

 男子生徒は平成27年、入部したサッカー部員から暴力や仲間外れなどのいじめを受け、28年5月に不登校になった。その後、登校を再開したが、状況は変わらず、学校側も適切な対策を講じなかったため、同年9月には自宅で自傷行為をした。その時期から今年3月の卒業まで再び不登校を繰り返した。

 しかし、市教委が男子生徒に対するいじめが、いじめ防止対策推進法の「重大事態」と認定したのは自傷行為から約5カ月後の29年2月。文部科学省の再三の指導でようやく認定した。

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 重大事態の認定を受けて設置された市教委の第三者委。今年3月に公表した調査報告書は、男子生徒へのいじめが「不登校の主たる要因」と認定し、学校や市教委の対応の遅れを指摘した。報告書策定に伴い、男子生徒側は「所見」を市教委に提出した。

 国の基本方針などによると、自治体の長は報告書と所見を読んだ上で、再調査の是非を判断するよう求められている。仮に調査が不十分と判断すれば、再調査できると規定しており、男子生徒の母親は「報告書には多くの矛盾点や虚偽報告が含まれている。所見を読んでいただければ、必ず分かってもらえると思っていた」と期待していた。

 ところが、肝心の奥ノ木信夫市長が先月末、記者団に「見ていない」と述べ、判断していないことを認めた。再調査の判断自体に関しても「市教委がやること。細部まで確認していない」と人ごとのように語る市長に対し、男子生徒の母親は「今も市長がどういう判断をしたのか何の連絡もない」といらだちを募らせる。

 文科省児童生徒課は市側の対応について「事実ならば、国の基本方針に反し、不適切。市長は速やかに判断し、結論を伝えるべきだ」と指摘した。教育評論家の尾木直樹氏も「川口市の教育行政のひどさはこれまで見たことがない最悪のレベル。市長の対応は法律違反であり、トップとして恥ずかしくないのか」と痛烈に批判する。

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 市側の不手際はこれだけにとどまらない。

 そもそも所見がどこに管理されているかについて、市教委側が把握していないことも判明した。

 いじめ事案を担当する市教委指導課の岩田直代課長は所見の存在について「(報告書公表時期が)年度末だったので前任者との引き継ぎが…」などと言葉を濁し、最後は「市長に提出していると思うが、確認する」と曖昧な回答に終始した。

 対する男子生徒の母親は岩田課長がこれまで指導課主幹として問題に関与していたことに触れ「所在が分からないなんて、あり得ない」と語気を強める。

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 ■生徒の母、知事宛てに文書 市に送付は返信なし

 川口市教育委員会などの対応に不信感を募らせている男子生徒の母親が上田清司知事宛てに、「県知事として川口市のいじめ問題についてどう考えるか」などとする文書をファクスで送信していたことが分かった。

 母親によると、知事室に送信したのは9月26日で、その3日後に知事直筆の署名が入った手紙が自宅に届いた。上田知事は手紙の中で「学校は生徒たちにとって安全で安心な場所でなければなりません」とした上で、「川口市内の中学校で生じたいじめの対応や教員の服務監督については、学校や学校の設置者である市教委によって行われるもの」と記した。

 母親はその後、川口市の奥ノ木信夫市長に一連のいじめ問題への見解を問いただす手紙を送付したが、8日現在で返信はないという。

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