いじめ調査委員の半数が交代、遺族に不安 「異例」専門家の指摘も 熊本高3自殺
西日本新聞 2018/11/24(土) 9:00配信
熊本県北部の県立高3年の女子生徒=当時(17)=が5月にいじめをほのめかす遺書を残して自殺した問題で、県教育委員会が設置した第三者委員会の委員が相次いで交代し、遺族が不安を募らせている。これまで体調不良などで2人が辞任し、新たに1人が辞めることが判明。県教委は「調査に影響はない」とするが、専門家は「委員の意向でこれだけ辞めるのは異例」と指摘する。
文部科学省のガイドラインは、いじめが疑われる自殺など「重大事態」の調査について、学校または学校設置者が主体となるよう規定。熊本県教委は、教育や法律などの専門家6人でつくる常設の諮問機関「県いじめ防止対策審議会」を調査主体とし、生徒や教職員の聞き取り調査に当たってきた。
県教委によると、今回の事案に関する6月の初会合で委員の1人が「事案の関係者と関係があり、中立性が保てない」として辞任。7月末には別の委員が体調不良を理由に辞めた。
いずれも委員を追加補充したが、さらに別の委員が今月末で辞める。「一身上の都合」で所属先を辞めたことが理由という。
第三者委はこれまで9回開かれており、12月中旬に調査の中間報告をまとめる方針。県教委の担当者は「いずれの辞任も予期しなかった。審議を積み重ねているので調査結果に影響はない」と話す。
第三者委を巡っては、自殺した生徒の両親が委員の推薦を希望したが、県教委は「(加害者側などに)中立性を保てない」と断っていた。両親は「県教委は『遺族に寄り添う』と言うが、2人目の辞任後も推薦の希望を聞いてもらえなかった。辞任理由の説明も十分でない」と反発している。
第三者委に詳しい大阪大大学院の小野田正利教授(教育制度学)は「後任の委員への説明に時間がかかる上、聞き取りなど重要な調査に関わっていないことも問題。県教委は遺族に丁寧に説明すべきだ」と指摘する。
教育評論家の武田さち子さんは「遺族の委員推薦を認めた事例はある。第三者委の事務局が県教委である時点で中立的ではなく、遺族推薦の委員を入れることでバランスが取れる」と話している。