<川口いじめ>不登校になった元生徒の実名、ネット上でさらされ炎上…投稿者を特定へ 東京地裁が命じる
埼玉新聞 2018/12/11(火) 23:54配信
埼玉県川口市の市立中学校でいじめに遭い不登校になった元男子生徒(16)がインターネット上の掲示板に実名をさらされ、プライバシーを侵害されたとして、投稿者を特定するための情報開示をインターネット接続会社(プロバイダー)3社に求めた訴訟で、東京地裁は10日、「投稿によりプライバシーが侵害されたことは明らか」と、投稿者の氏名、住所などの開示を命じた。
判決を受け、男子生徒側は「誹謗(ひぼう)中傷を投稿した人に刑事告訴や民事訴訟を検討する」としている。
訴訟でプロバイダー側は「元生徒の氏名はネットの掲示板で既に公開されていたから、プライバシーとして保護されない」と主張したが、志賀勝裁判長は「マスコミはいじめの被害者名を報道しておらず、元生徒がいじめを受けたことは周知の事実とは言えず、プライバシーとして保護されるべき」と退けた。
元生徒は1年生の頃から部活動の部員からのいじめや暴力、顧問教諭による体罰を受けたと訴え、市教委の第三者委員会は今年3月の報告書で「法律上いじめと認定できる行為があり、不登校の主たる原因と考えられる」と認定。調査開始に手間取るなど学校や市教委の不適切な対応があったことも指摘した。
元生徒側によると、入学当初は会員制のアプリでのいじめ投稿だったが、2017年10月ごろからネットの掲示板の匿名投稿が急増。これを受けて元生徒側の調査が始まり、今年6月に提訴した。
元生徒側は「アプリは投稿者が分かるが、ネットの掲示板は分からない。元生徒の実名を書く投稿も出て“炎上”状態になった。学校側が保護者会などで適切な注意喚起をしなかったのが最大の原因」と訴えた。
元生徒の母親は11日、埼玉新聞の取材に「裁判官がネットの誹謗中傷で私たち親子が苦しんできた不安や恐怖を正面から受け止めてくれた。判決がネットいじめの抑止につながってほしい」。元生徒は「今は高校に通っているが、ネットの掲示板が存在していることで、また何か書かれるのではないかと日々不安。裁判官はそのことを理解してくれたと感じる」と話した。
代理人の荒生祐樹弁護士は「いじめの被害者としてプライバシーが保護されることを社会的に示した判決。(誹謗中傷がいけないのは)当たり前だが、なかなか裁判で闘う人はいない。元生徒の頑張りが認められた形。ネットいじめ撲滅への第一歩となると思う」と話している。