立件優先、詐欺容疑を適用 不適切保育で元園長の女逮捕 保護者は「虐待」思い強く
神戸新聞NEXT 2019/2/7(木) 7:30配信
兵庫県姫路市から給付費を詐取したとして、同市の私立「わんずまざー保育園」(廃園)の元園長の女(47)が兵庫県警に詐欺容疑で逮捕されて、7日で1週間となる。県警は元園児の保護者らが望んだ「虐待事件」としてではなく、園児の定員超過を隠して給付費をだまし取った容疑での立件に踏み切った。同園が社会に与えた影響の大きさを考慮したとみられ、不適切な保育実態の全容解明が期待されている。
2017年2月の兵庫県、姫路市の特別監査で明らかになったのは、40食前後の給食を約70人で分け、おかずがスプーン1杯分だけという子もいた同園の保育実態だった。衝撃的な内容は連日報じられ、給付費を受け取るための園児数や保育士数の虚偽報告も判明。こども園の認定基準や監査のあり方などが問われた。
不適切な食事の提供が園児の発育に与えた影響の調査なども行われ、保護者らの間では「児童虐待にあたる」との声が上がった。ただ、行政指導する立場の姫路市は暴行や傷害などの容疑による立件は困難と判断し、18年4月、保育士3人分を水増しして給付費や補助金計約380万円をだまし取った詐欺容疑の告訴状を提出した。
一方で「虐待」へのこだわりを捨てられない元園児の保護者たち。同月、姫路署へ「市が訴える詐欺被害以上に深刻なのは、子どもたちが受けた虐待に相当する行為。二度と同じ事が繰り返されないように厳罰を求める」などとする上申書を提出した。
こうした中、県警が選んだ立件の道は、定員を上回る園児を受け入れようとしているのを隠して同市に給付費を申請し、約830万円をだまし取った詐欺容疑だった。元園長の女は15年3月の申請時点で定員を大幅に超える園児らの受け入れを進めており、容疑を立証しやすいと判断したとみられる。
ただ、今回のように発覚から2年近くがたつような事件では、逮捕ではなく、書類送検にとどめるケースも多い。逮捕に踏み切った判断について、捜査関係者は「社会的影響は重大で、総合的な捜査の結果、逮捕に相当すると判断した」と説明する。
詐欺容疑でだまし取った給付費は総額約1億円に上るとされる。県警は詐取金の使途や動機を解明する中で、給食費を受け取りながら人数分用意しなかった理由も追及するとみられる。
次男を通わせていた女性(41)は「明らかになった保育内容は『不適切』では言い表せない犯罪行為そのもの。ただ、罪名が何であれ、法廷に出て、真実を明らかにしてほしい」と望む。
【認定こども園「わんずまざー保育園」の不適切保育問題】兵庫県と姫路市が2017年2月に実施した特別監査で、定員を大幅に超える園児を受け入れていたことが発覚。通常よりも少ない給食を園児に提供し、虚偽の報告書を作成して隠していた。保育士に無給勤務や遅刻などで罰金を科す不当な雇用実態も判明。県は全国で初めてこども園の認定を取り消した。