千葉女児虐待死 「どう喝」伝わらず、学校間の情報引き継ぎに課題

千葉女児虐待死 「どう喝」伝わらず、学校間の情報引き継ぎに課題
毎日新聞 2019/2/25(月) 20:12配信

 栗原心愛(みあ)さん(10)への虐待の兆候は、かつて暮らしていた沖縄県糸満市で把握されていたが、2回の転校でその情報が学校間で十分に引き継がれなかった。千葉県柏児童相談所は3校目の学校に見守りを任せたが、情報不足が警戒心の薄れにつながった可能性もある。専門家は「細かな情報を積み重ねればリスク判断や親への対応は異なったはず」と指摘する。

 心愛さんは2017年夏まで、母なぎさ容疑者(32)=傷害容疑で再逮捕=の実家がある糸満市に住んでいた。同市は同7月、親族を通じて父勇一郎容疑者(41)=同=によるなぎさ容疑者へのドメスティックバイオレンス(DV)と心愛さんに対するどう喝を把握。通学先の学校にも「注意深く見守ってほしい」と依頼した。

 心愛さんは同9月に同市の別の学校に転校予定だったが、一家は勇一郎容疑者の実家がある千葉県野田市に引っ越した。突然の変更に糸満市教委は疑問を抱いたものの、転校先の野田市立小にDVやどう喝の情報、見守りの必要性を伝えなかった。身体的虐待が確認されなかったためとみられる。

 同11月に心愛さんが学校アンケートで父からの暴力を訴えたため、柏児相は心愛さんを一時保護。勇一郎容疑者は18年1月、学校と市教委を威圧してアンケの写しを入手し、直後に別の市立小に転校させた。野田市教委によると、こうした高圧的な態度は学校間で引き継がれず、理由についても記録は残っていない。転校先の学校関係者は「丁寧で腰が低い父親」と振り返る。学校は家庭訪問をせず、年明けの長期欠席も重大な異変と捉えなかった。

 文部科学省は15年に都道府県教委などに通知を出し、転校や進学時に虐待情報を学校間で共有するよう求めた。だが、様式はなく、首都圏の公立小のある女性教諭は「どのような情報を引き継ぐかは現場任せだ」と話す。

 NPO児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長は「虐待を繰り返す親が発覚を恐れて子供を転校させるケースは多い。学校間でも細かく情報を引き継がなければ適切な対応は取れない」と指摘する。【斎藤文太郎、町野幸、信田真由美】

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