相次ぐ論文不正 背景に研究費獲得への焦りか 京都大不正

相次ぐ論文不正 背景に研究費獲得への焦りか 京都大不正
毎日新聞 2019/3/26(火) 21:16配信

 研究者が学術論文のデータなどを捏造(ねつぞう)・改ざんする研究不正が相次いでいる。熊本地震(2016年4月)に関する論文では、大阪大も今月15日、元准教授による観測データの捏造と改ざんがあったと認定した。後を絶たない不正の背景には、研究費やポストを獲得するための焦りがあると指摘される。

 研究不正の対応について文部科学省が定めるガイドラインでは、捏造と改ざん、盗用が「特定不正行為」とされる。文科省は報告を受けた研究不正を公表しているが、抑止効果は期待通りには働いていない。

 京大では昨年1月にも、iPS細胞研究所の特定拠点助教が論文の主張に沿うようにデータを操作していたことが分かり、捏造・改ざんと認定した。当時、記者会見した山中伸弥所長は不正の背景を問われ、研究者が受ける心理的な「プレッシャー」を挙げた。

 研究者は、著名な学術誌に掲載された論文数で業績が評価される。一方、期限付きの研究プロジェクト予算を研究者同士で取り合う「競争的資金」が増え、任期付きポストの割合も増している。不安定な環境に置かれた研究者は、短期間で成果を上げなければならない焦りを抱える。

 米科学誌サイエンスは昨年8月の記事で、研究不正による論文撤回の多い世界の上位10人のうち、日本人研究者が半数を占めたと紹介した。研究倫理に詳しい榎木英介・近畿大医学部講師は「発表論文が目立てば、研究資金やポスト獲得につながる。日本の研究者が置かれた競争的な環境が、不正を生む一つの誘因になっている」と指摘する。【鳥井真平、阿部周一】

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