日本金属学会、東北大の元学長の論文を撤回
毎日新聞 2019/3/27(水) 18:07配信
日本金属学会(事務局・仙台市)は、過去に同学会の英文学術誌に掲載された東北大学元学長の井上明久氏の論文3本について「科学的に不適切」な内容があるとして撤回した。別の論文の写真やグラフを流用しているという。
撤回されたのは、井上氏が東北大教授を務めていた1997、99年と2000年に掲載された「ジルコニウム合金」の強度などに関する論文。過去の論文に掲載された「ネオジム合金」の試料写真を流用したり、解析グラフに異なる数字を挿入して使い回したりしたと結論付けている。
井上氏は金属工学の国内第一人者で、06〜12年には東北大学長も務めた。論文に関する疑惑は、07年に匿名による文部科学省への告発があり、大学は井上氏が学長を退任した後の13年に正式な調査委員会を設置。16年12月に「不正はなかった」との報告書を公表した。
しかし、この報告書を不服とする金属学会の元会長ら6人が17年10月、論文の撤回を学会に要請。学会の学術誌編集委員会が独自に調べていた。
井上氏は毎日新聞の取材に、弁護士を通じて「研究担当者が写真を取り違えた」と主張。東北大は「お答えすることは特にありません」としている。
愛知淑徳大の山崎茂明名誉教授(科学コミュニケーション論)は「写真は研究の独自性を示すもので、流用が故意でなければ不正としないということには疑問がある」と指摘した。【山越峰一郎】