学校での事件、事故の被害者遺族らがシンポ 教委や学校に情報公開求める声

学校での事件、事故の被害者遺族らがシンポ 教委や学校に情報公開求める声
毎日新聞 2019/6/25(火) 20:26配信

 学校で起きた事故や事件の被害者遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」のシンポジウムが今月、神戸市中央区で開かれた。「学校事故・事件の解決の方向とは?」がテーマ。いじめや体罰など事故調査を巡る課題が全国各地で噴出している第三者委員会のあり方などについて、遺族や教育関係者ら約110人が意見を交換した。特に教育委員会や学校から被害者側への情報公開を求める声が上がった。【栗田亨】

 「遺族は(調査報告書の)結果ではなく、自分の子どもについてすべてのエピソードが知りたい。(第三者委には)なかなか分かってもらえない」。

 シンポジウムの基調報告で「語る会」の内海千春代表世話人=兵庫県たつの市=は、第三者委と遺族との意識のずれを指摘した。自らも1994年に小学6年だった長男を自殺で失った。裁判を起こし、教師の体罰が原因だと認定されたが「自分の子どもに何があり、どんな状態で死に至ったのか、自分なりに納得しないと(亡くなったことに)向き合えない」と訴えた。

 「語る会」は内海さんが長男を亡くした94年に結成した団体が前身となっている。学校内でのいじめや体罰、指導死、事故などの被害者の相談を受け、当事者同士で支え合う活動を続け、毎年シンポジウムを開催。近年は、いじめ防止対策推進法に基づき、いじめによる自殺などが疑われる「重大事態」が発生した際、第三者委員会の調査を巡る相談が全国から多数寄せられている。

 第三者委がまとめた報告書を、遺族が受け取らない事例も相次ぐ。内海さんは両者の信頼関係が構築できないまま調査が進んだためだと指摘し「行政の信頼性を担保するのは情報公開だ。(第三者委も)情報提供なくして信頼関係はできない。遺族の『知りたい』という思いに寄り添ってほしい」と強調した。

 一方、事件が起きた際の対応について「第三者委や学校に調査を任せきるのは非常に危うい。情報を自ら集め、学校や第三者委と同じテーブルに着き、要望や対話をする必要がある」と参加者らにアドバイスした。

 また、倉田久子さん(58)は「学校と教育委員会の対応が良かったまれな例」として自らの体験を語った。事故直後に校長から「学校で起きたことは、すべて学校の責任です」と謝罪を受け、部員に直接聞き取る機会を設けられたことで、早い段階で事故の状況を詳しく知ることができたという。倉田さんは「最初にボタンを掛け違うと途中で関係を修復できなくなる。取り返しのつかないことが起きた時こそ、校長や教員の技量が問われる。正しい方向を見誤らないでほしい」と学校側の自覚を求めた。

 質疑応答では、遺族や第三者委の経験者、弁護士らが活発に意見を交わした。全国各地で学校事故・事件調査のアドバイザーを務める住友剛・京都精華大教授が「制度の問題もあるが、担う人に関心がある。答えがすぐには出ない重い課題を引き受けられる研究者や教職員、行政職員をどう作るかが課題だ」と締めくくった。

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