「論文剽窃」を訴えた学生の問題提起に「告訴」で応じた慶煕大・ソウル大教授

「論文剽窃」を訴えた学生の問題提起に「告訴」で応じた慶煕大・ソウル大教授
ハンギョレ新聞 2019/10/3(木) 15:42配信

慶煕大学とソウル大学、論文剽窃疑惑を提起した学生を相次いで告訴 「大学でも公論の場が破壊され…司法万能主義の拡散が懸念」

 慶煕大学の学部生のPさんは6月、構内に「○○○教授議会議長、慶煕大学教授審査に提出した論文は剽窃か?」という見出しの掲示物を貼り出した。大学院のK教授が任用と昇進審査の際に慶煕大学に提出した論文が、中国延辺大学のある修士学位論文をかなりの部分剽窃したものだという主張が書かれた掲示物だった。Pさんは掲示物で「剽窃判別プログラムを通して確認してみた結果、剽窃率は80%にのぼった」と書いた。実際、掲示物に書かれた論文を含むK教授の論文数件は剽窃疑惑が提起され、慶煕大学研究倫理真実性委員会が調査に乗り出した状態だ。このうち一件は真実委の1次判定で剽窃に該当するという結論が出ており、他の一件は容疑なしとの判断を受けた。

 問題はK教授の対応だ。K教授は6月、Pさんを名誉毀損の疑いで刑事告訴した。K教授は、P氏の掲示物の写真をカカオトークを通じてシェアした他の教授のA氏も情報通信網法上の名誉毀損の疑いで告訴した。しかし、警察はPさんとA氏に対して容疑なし不起訴の意見で送検し、検察も「証拠不充分」で容疑なしとした。K教授はこのような処分を不服とし、先月9日、検察に抗告した。K教授はハンギョレとの通話で、「真実委の調査が完結してもいないのに、Pさんが事実と異なる内容を掲示物に書き、不特定多数に公開した」とし、「その内容が構成員に拡散している状況なので、自分を守るためにやむを得ず告訴した。(抗告は)法的に争う余地が残っていると判断したため」と話した。しかし、Pさんは先月23日、再び掲示物を貼り出してK教授に「謝罪し、教授職を辞任せよ」と要求した。Pさんは「教授陣の諮問を経て掲示物を作成したが、それから約2カ月過ぎてK教授が私を刑事告発した事実を警察を通じて知った」とし、「K教授は私にいかなる釈明や告訴の趣旨も説明しなかった」と話した。

 大学で学生たちが教授の論文剽窃をめぐって掲示物などの公論の場を通じて問題提起すると、当事者の教授たちがこれに関して討論や反論をしながら論争するのではなく、刑事や民事の告訴を通じて対応する事例が相次いでいる。象牙の塔まで「司法万能主義」に陥ったという指摘が出ている。

 最近、ソウル大学でも似たようなことがあった。2017年、ソウル大学国語国文学科の大学院生のBさんが、掲示物を通じて自分を指導したP教授の論文剽窃疑惑を提起した。疑惑を調査したソウル大学研究真実性委員会は、2000〜2015年にP教授が発表した論文11本と単行本1冊に対し、「研究真実性違反の程度がかなり重い研究不正行為および研究に不適切な行為」だと昨年結論づけた。しかし、P教授は今年4月、Bさんを相手に名誉毀損禁止仮処分を申し立てた。Bさんが「学校で剽窃ではないと判定した論文8件も剽窃だと主張する掲示物を学内に掲示し、虚偽事実を流布した」というものだ。掲示物をはずさない場合、1日100万ウォン(約9万円)の強制履行金を賦課してほしいとも要請した。

 しかし、韓国比較文学会は5月、ソウル大学が剽窃ではないと判断したP教授の論文2本についても「重大な剽窃」と結論づけ、学会からP教授を除名した。先月19日、ソウル大学国語国文学科の教授たちは立場文を発表し、学生を相手に訴訟を起こしたP教授に辞任を要求した。「自分の剽窃を訴えた学生に訴訟を起こすのは、教授としての本分を破る行為だ」ということだ。

 これをめぐり、大学社会でも公論の場が破壊され、「司法万能主義」が広がっているのではないかという指摘が出ている。大学教育研究所のキム・サムホ研究員は「学問共同体である大学ですら固有の討論文化が衰退し、司法万能主義が広がっている」とし、「司法体系は最後の砦として弱者が頼れる空間でなければならないが、むしろ大学内の強者と言える教授が学生を抑圧する手段として使っている。このようなことが日常化すれば、学生が意見を出しにくくなり、大学内の公論の場自体が萎縮せざるを得ない。教授と学生だけでなく、学生の間でも司法的に解決することが起こるかもしれない」と指摘した。大学研究ネットワークのコ・ジュヌ代表は「司法処理をするといって接近するのは、大学内の問題提起を困難にする行為だ」とし、「学術的な問題は学術の場内で議論できることなのに、法的に争うのが望ましいかどうか疑問だ」と指摘した。

キム・ミンジェ記者 (お問い合わせ [email protected] )

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