奈良県歴代教育長、複数が退職時に「引継書」作成せず 「口頭で済ませた」釈明

奈良県歴代教育長、複数が退職時に「引継書」作成せず 「口頭で済ませた」釈明
毎日新聞 2019/12/12(木) 12:31配信

 複数の元奈良県教育長が、懸案事項などを後任者に文書で伝えるための「引継書」を作成しないまま退職していたことが明らかになった。元教育長らは「引き継ぎは口頭でした。書類を作らなくても分かっていると思った」などと釈明している。【新宮達】

 県市民オンブズマン連絡会議が、県立高校の再編や耐震化に関する問題が歴代の教育長にどのように引き継がれてきたのかを調べるため、今年11月に現在の吉田育弘(やすひろ)教育長の前任2人の書類の情報公開請求を行った。ところが県教委の回答は「不存在」で書類が作成されていないことが分かった。

 2008〜13年度に教育長を務めた冨岡将人氏(68)は毎日新聞の取材に対し、自身が教育次長から昇格して就任した際に引き継ぎ文書を受け取った記憶がなく、吉田教育長に引き継ぐ際にも口頭で済ませたことを認めた。「紙で必ず残さないといけないとの認識はなかった。申し訳ないとしか言いようがない」と話した。

 また、02〜07年度に教育長だった矢和多忠一氏(74)も「随分昔のことで覚えていないが、事実なら仕方のないこと」と話した。

 県教委に所属する職員の服務規程では、異動時などに専用の書式による引継書の作成と、引き継ぎ完了時に後任者とで署名・押印して所属長への報告を義務付けている。教育長はこの規程の対象外だが、引継書を作成した場合は保存期間は30年と定められている。県教委企画管理室は「引き継ぎは口頭でされたのかもしれないが、書面としてはなかった」としている。

 同オンブズマン事務局の中垣高代さん(60)は「在任中に取り組んできた課題を見直すきっかけにもなるべきもので、あって当たり前の物がないというのは信じられない」と批判している。

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