教諭がいじめをけんかと判断 安全配慮義務違反で県に賠償命令 熊本いじめ自殺控訴審
毎日新聞 2020/7/14(火) 21:28配信
2013年に熊本県立高1年の女子生徒(当時15歳)が自殺した原因は同級生のいじめに対する学校の不適切な対応だったとして、遺族が県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は、教諭の不適切な対応を学校側の安全配慮義務違反と認定し、女子生徒に精神的苦痛を与えたとして慰謝料など220万円の支払いを県に命じた。
女子生徒は13年度に入学し、学校付属の学生寮で生活。同年8月に実家で自殺した。1審・熊本地裁判決(19年5月)はいじめ行為への慰謝料などとして計11万円の支払いを元同級生に命じたが、県への請求は棄却。遺族が県のみを相手に控訴していた。
矢尾裁判長は、元同級生が無料通信アプリ「LINE(ライン)」で脅迫的なメッセージを送ったり、私物を隠したりした6件の行為をいじめと認定。その上で、寮生を指導する「舎監(しゃかん)長」だった教諭が、元同級生とのトラブルを校長まで報告せず、けんかと判断した対応を安全配慮義務に違反すると判断した。
また、いじめ行為と舎監長らの不適切な対応により「寮生活を継続しなければならない思いからうつ状態に陥り、自殺に至った見込みは高い」と指摘。一方、教諭らに女子生徒の自殺は予見できなかったとして、安全配慮義務違反と自殺との因果関係は否定した。
判決後に記者会見した女子生徒の母親(52)は「いじめによって苦痛を負っていたことと、学校側の安全配慮義務違反が認められたことはとても大きかった」と話した。遺族側の迫田登紀子弁護士は「女子生徒の(いじめによる)傷つきを丁寧にとらえており、いじめ防止対策推進法の趣旨をとらえた判決だ」と評価した。
熊本県の蒲島郁夫知事は「今後判決内容を十分に確認した上で、対応を検討したい」とコメントした。【宗岡敬介】