性犯罪根絶に取り組んできた佐々木さやか文科政務官に聞く「わいせつ教員への厳格化は進んでいるのか」
FNNプライムオンライン 2020/9/12(土) 21:51配信
わいせつ教員数が過去最高を更新する中、喫緊の課題となっている教育職員免許法(以下教免法)改正。現行の教免法では、わいせつで懲戒免職となっても3年経てば再び免許取得が可能だ。
この法律の改正に意欲を示すのが萩生田文科相だが、次の官房長官に有力視されており、そうなれば教免法改正にブレーキがかかる懸念もある。
「ポストコロナの学びのニューノーマル」第6回は、佐々木さやか文科政務官に、わいせつ教員への厳格化の現況を聞く。
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児童生徒へのわいせつは絶対あってはならない
「私自身は政務官の立場とは別に議員としても、子どもたちの教育問題だけでなく、暴力被害についても関心を持って取り組んできて、いまは政務官の立場でこの問題に取り組んでいます」
佐々木政務官は公明党の参議院議員であり、弁護士資格を持つ。2019年に文科政務官に就任する以前は、AV(アダルトビデオ)出演強要問題について党の対策プロジェクトチームの座長として主導するなど、性犯罪の根絶に取り組んできた。また、まだマタハラ(マタニティ・ハラスメント)という言葉が一般的で無かった2014年に、国会で初めてマタハラの問題を訴えたことでも知られている。
――いまわいせつ教員の懲戒免職の数が過去最多となっています。
佐々木氏:
残念ながら児童生徒に対するわいせつ行為等で、処分を受ける教員は増えています。非常に残念なことですし、特に子どもたちが信頼する学校の先生という大人から、そういう被害を受けるということは取り返しのつかない重大な被害となります。
そう考えたとき、本来学校は安全であって、子どもたちがすくすく育っていく環境をつくらなければいけないのに、それどころか取り返しのつかない被害が出てしまうのは絶対にあってはならないことだと思います。
わいせつ教員復帰への保護者の心配はもっともだ
――先日、性犯罪治療の専門家に話を聞きましたが、「小児性愛は病気で、治療が必要だ」とわいせつ教員が再び免許を取得することに反対でした。
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佐々木氏:
小児性愛を病気と定義することについては、様々な議論・研究がされていると承知しています。また医学的にどういう治療が効果的なのか、どういう状態が治ったといえるのか、様々な研究がされていると認識しています。こうした医学的知見の積み重ねを参考にしながら、再発防止という観点から効果的な対処をしていかなければいけないと思います。
――「犯罪白書」によると、小児わいせつの再犯率は約10%ですが、前科が2回以上ある者の再犯率は80%を超えています。保護者にとって、子どもの学校でわいせつ教員が再び教壇に上がることには強い不安があります。
佐々木氏:
そうした再犯率は承知しています。小児わいせつの再犯を防ぐために、たとえば社会復帰した者の情報を、社会でどういう風に共有すべきかという議論もあります。
しかし、一番大事なのは子どもたちを守るということです。両親を含めご家族の心配はもっともだと思います。そういった教員が再び免許を取得し、学校現場に戻ってくることについて、どうあるべきかをいままさに検討しています。具体的な内容までまだいえる段階でありませんが、非常に重要な問題だと思っています。
再取得期間の延長も1つだが、より抜本的な改正が必要
――萩生田大臣が教免法改正に意欲を示していますが、厳格化の具体策として、わいせつ教員に免許の再取得をさせないことがあります。
佐々木氏:
教免法改正でたとえば経過期間を延長するとか、免許の再取得のありかたを含めて検討していきたいと思います。この問題については、子どもたちを守るためにどういう改正が必要かということを、抜本的に考えていきたいと思います
――免許再取得の期間を5年に延長すれば安全ですか?
佐々木氏:
それは検討事項の1つではありますけど、それだけで足りるとは私は全く思っていませんのでより抜本的な改正が必要だと思いますね。
「わいせつ教員の情報検索可能なのは3年」が課題
――都道府県の教育委員会が運営する「教員免許管理システム」は、教員の情報を一元管理していますが、わいせつ行為など懲戒免職となった具体的な理由は確認できません。これを改革することは検討されていますか?
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佐々木氏:
おっしゃる通り懲戒免職の理由がわかるようになっていませんが、文科省では官報情報の検索ツールを運用しています。ここでは懲戒免職になった教員の官報上の情報について、被処分者の名前で検索できるようになっています。
保護者や一般の方は使えませんが、採用権者が情報検索を出来、文科省でも教員の処分状況を共有している状況です。
――官報では公告されても、3年を超えると情報が検索できなくなりますね。
佐々木氏:
まさにいまそれが課題の1つです。官報の情報は1度載ったら消えるわけではないのですが、文科省の情報ツールでは3年を超えて閲覧出来ないことになっていて、課題だと思っています。
教育委には「厳正に処分、原則懲戒免職」と指導
――文科省は各地域の教育委員会に、わいせつ教員の懲戒免職や第三者委員会による調査を指導・推奨しています。今後、全国で制度や基準を共通化、義務化する考えはありますか?
佐々木氏:
児童生徒に対する教員のわいせつ行為は、絶対あってはなりません。これについては「厳正に処分すべし。原則として懲戒免職にするべきと基準を設け、処分を行って頂きたい」と指導を重ねて行っています。
いままで基準が無かった教育委については、基準を設けるなど改善が見られています。これをしっかり徹底していくことが大事だと思います。
――ほかの制度面で厳格化を検討されているものはありますか?
佐々木氏:
そうですね。実際に刑事事件になった事案を見ますと、名前を変えて違う学校に行ったりする者も中にいるということで、本人確認のあり方も課題です。同一人物かどうか、しっかりとチェック出来ないと意味がありません。
「2度と免許を取らせないで」の声は全くその通り
――最後にあらためて、教免法改正について伺います。いま私の記事に寄せられるコメントを読んでいても、「わいせつ教員に2度と免許を取らせないで欲しい」という声がほとんどです。個人的見解でも政治家としての見解でもいいので、これについてどう思いますか?
佐々木氏:
そういう声が多いのは、私も認識しているつもりです。普通の感覚として、教員がわいせつ行為を児童生徒に行うのは、絶対にあってはならないことだと思います。こうした声は大きいですし、全くその通りだなと思います。
子どもたちを守るためにどうするべきか、そしてどう実現するかは、いままさに検討しています。教員免許の再取得のあり方についても、もちろん議論していきたいと思います。
――ありがとうございました。
インタビューを終えて:
佐々木政務官は、性犯罪の根絶に向け、被害の訴えがなくても起訴できる「非親告罪」などを盛り込んだ、110年ぶりとなる刑法改正を主導してきた。佐々木氏に子どもたちをわいせつ教員から守る制度改革を強く期待したい。