「同僚が小6女子をヒザの上に」“わいせつ教員”過去最多に…現役教員らの本音
文春オンライン 2020/10/19(月) 17:01配信
9月28日、学校での性暴力防止に取り組む保護者団体「全国学校ハラスメント被害者連絡会」が、文科省に提出した署名が話題になった。その内容は「子どもにわいせつ行為をして懲戒処分になった教員に、教員免許を再交付しないでほしい」というもの。同団体の呼びかけで、わいせつ教員への免許再交付に反対する署名は約5万4000筆集まったという。
文部科学省の調査では、わいせつ行為等で懲戒免職処分になった教員は、過去最多の282人(*)を記録。自校の教員から被害を受けた児童や生徒は138人にのぼるという。
(*)…文部科学省「わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況(教育職員)(平成30年度)」
現行の教育職員免許法では、子どもにわいせつ行為をはたらき懲戒免職処分を受けて教員免許が失効しても、処分から3年以上経過すれば免許の再取得が可能だという。文科省は制限期間を5年に延長する規制強化を検討しているが、「そもそもわいせつ教員への“免許の再交付”をやめるべきでは」という声が、保護者から上がったのだ。
保護者からすれば、わいせつの前歴がある教員が再び生徒と交流するのは不安だろう。一方で現場の教員たちは、この「免許再交付問題」についてどう感じているのだろうか。
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再犯リスクを抱えたまま、免許を再取得する可能性も
現在、首都圏の中学校に勤務している佐々木麻由美さん(仮名・42歳)は「免許を再交付する意味がわからない」と、眉をひそめる。
「身近で事件が起きたことはありませんが、282人はとても多いと思います。性犯罪は再犯率も高いし、5年間反省をしたからといって欲望を抑えられるとは限らないですよね。同僚にもこの制度について意見を聞いてみたのですが、全員『再交付はしないでほしい』と言っていました」
佐々木さんの言うように、ほかの性犯罪に比べて小児わいせつの再犯率は高いといわれている(**)。再犯リスクを抱えたまま、免許を再取得する可能性もあるのだ。
(**)…平成27年版「犯罪白書」
また、近年の傾向から生徒や保護者との“LINEのID交換”を禁止している学校も多いという。
「他校ですが、ある男性教員が女子生徒とLINEでやりとりしているうちに、教員が生徒に好意を持ってしまった、という話を聞きました。生徒本人がほかの教員に相談して問題が発覚したそうです。教員向けの研修に参加すると、以前よりもわいせつ行為関連の指導が厳しくなったように感じました」
通りすがりにスマホで撮られる……
また、佐々木さん自身も生徒からほかの教員に関する相談を受けることがある、と話す。
「とくに印象的だったのが、ある男性教員が突然スマホで写真を撮ってくる、という女子生徒からの相談です。何も言わずにパシャっと撮っていくので、子どもたちも困惑していましたね。本人に理由を聞くと『写真が好きだから』の一点張りでしたが、やめるように諭すとゲリラ撮影の相談もなくなりました」
彼の目的は不明だが「本当に写真が好きな人が、そんな撮り方しますかね……」と、首をかしげる。
「自分の中学時代を思い返すと、女子生徒にばかりスキンシップをしてくる有名な男の先生がいました。当時はとくに大きな問題にならなかったけど、昔から怪しい人はいましたよね。昔に比べて、最近は問題意識が高まり、表沙汰になるようになったのは良い傾向だと思います」
「正直、同じ職場で働くのはイヤですね」
小学校で教鞭を執る津田尚樹さん(仮名・35歳)も「再交付しなければ、犯罪を未然に防げるはず」と話す。
「免許が再交付されても採用されるかわかりませんが、臨時採用の枠が余っているので復帰の可能性はゼロではないと思います。正直、同じ職場で働くのはイヤですね……」
前出の佐々木さん同様、身近に逮捕者が出るほどの事件は起きていないという。その一方で、校内がざわつくトラブルはしばしば起きる、と津田さん。
「6年生のクラスを受け持っていた40代の男性教員が、休み時間にクラスの女子生徒をヒザに座らせていたんです。生徒本人は気にしていなかったのですが、ほかの教員がその様子を見て『小学6年生の女子が先生のヒザに座るのはさすがにおかしい』という話になり、その教員は厳重注意を受けました。
生徒本人はよくても、ほかの生徒が不快に思うこともありますからね。自分なら、絶対に生徒をひざに乗せないです」
前出教員と生徒の距離の近さについては、一部の保護者からも懐疑的な声が出ているという。また、ほかの教員による、若い女性教員に対するセクハラも横行しているという。
「中高年のベテラン教員が20代の女性教員に身につけている下着の色を聞いたことが、職員室内で問題になりました。彼女もかわいそうだし、そもそも業務に関係ない。何より、自分が“セクハラ発言をしている”という自覚がない人には、子どもたちに関わってほしくないですよね」
2018年度は45人の教員(*)が、教員からのわいせつ被害に遭っているという。
たとえ、わいせつ教員が教壇に復帰しても「現場の負担は増えるだけでは」と津田さんは指摘する。
「とくに小学生は、本人たちが被害に気づいていなかったり、何かイヤなことをされても言語化できなかったりと、ケアが必要な年齢です。子どもたちを最優先に守らなければならない学校に、わいせつ行為の前歴がある教員がいるだけで、周囲の教員はより気を配らなければならない。いくら人手が足りなくても、戻ってきてほしくないです」
保護者だけでなく、現役の教職員からもわいせつ教員の復帰に反対する声は多いようだ。
萩生田文部科学大臣は「再交付反対の署名」を受けて、以下のように語った。
「個人的には、わいせつ教員を教壇に戻さない方向で法改正を目指していきます。ただ、数年経って更生して戻って来たいという人たちに、“職業選択の自由”をあらかじめ拒むことが憲法上できるのかという課題がある」
今や大きな社会問題となっている“わいせつ教員問題”。現場の模索は続きそうだ。