わいせつ行為で免許失効の教員、官報に氏名と処分理由を明示…文科省が改正方針
読売新聞オンライン 2020/12/25(金) 19:57配信
文部科学省は25日、児童生徒らにわいせつ行為をして懲戒免職となり、教員免許が失効した際、官報に氏名とともに、あらたに処分理由を明示できるよう教員免許法施行規則を改正する方針を明らかにした。萩生田文科相がこの日の閣議後記者会見で明らかにした。
一方、文科省は、教員免許が失効しても、3年たてば再取得できる現行の教員免許法の改正案を検討したが、来年の通常国会への提出は断念する。萩生田文科相は、「じくじたる思いがあるが、この問題には引き続き取り組んでいく」と述べた。
各教育委員会は教員の採用時、文科省の「官報情報検索ツール」で過去の失効歴などを確認している。ただし、官報には処分理由が掲載されていないことが課題として指摘されていた。
わいせつ行為などで処分される教員数は高止まりしており、昨年度は273人で過去2番目の多さだった。そこで、文科省では来年2月、検索ツールの対象期間を、現行の過去5年間から40年間に大幅に拡充する。処分理由を明示する今回の改正と合わせ、抜本的な対策とする考えだ。
増え続けるわいせつ教員問題に、効果的な施策を講じようと、文科省に検討チームが設けられたのは今年1月だった。
教員免許法の改正について、内閣法制局と協議を重ねてきたが、刑法では、禁錮以上の刑は終了後10年で消滅する。また、憲法で定められた「職業選択の自由」との兼ね合いもあり、「わいせつ教員の永久追放は難しいとなった」(文科省幹部)。
そこで、今回、わいせつ行為で懲戒免職になったことを官報に掲載するよう、規則を改正することになったが、有識者からは様々な指摘も出ている。
個人情報保護問題に詳しい岡村久道弁護士は、「教員としての適格性が厳しく問われて当然だが、官報で誰でも見られる状態にすれば、社会復帰の機会が全面的に失われる。教育機関に限定して情報共有できるような法整備を考えた方が、バランスが取りやすいのではないか」と指摘。
一方、子供の人権擁護に取り組むNPO法人「千葉こどもサポートネット」の米田修理事長は、「わいせつ行為をした教員を二度と教育現場に戻してほしくないという保護者らの声は根強い。教員のわいせつ行為は、児童生徒からの信頼感を利用しており、他の職業と比べて特に悪質だ。今回の文科省の方針には賛成だ」と話している。