旭川医大が大学病院長を解任 「情報漏えい、学内混乱」理由に 文科省は背景調査

旭川医大が大学病院長を解任 「情報漏えい、学内混乱」理由に 文科省は背景調査
毎日新聞 2021/1/26(火) 16:57配信

 北海道旭川市の旭川医大(吉田晃敏学長)は26日、記者会見を開き、同大病院の古川博之院長を25日付で解任したと発表した。同大では、吉田学長が学内会議で新型コロナウイルスの感染者集団(クラスター)が発生した民間病院を名指ししてなどと発言したとされ、問題となっていた。大学側は解任について、古川氏が会議内容を外部に漏らすなどして学内を混乱させたとしている。

 同大は解任理由として、古川氏が��2020年4月の全学説明会と11月の大学運営会議を無断で録画・録音して外部に漏えいした��旭川市にある吉田病院からのコロナ患者の受け入れを巡り、吉田学長との協議内容を恣意(しい)的に報道機関に伝え、学内を混乱させた�I�学長を兼務しているにもかかわらず、大学の方針と異なる内容の発言を続けた――という3点を挙げた。

 古川氏は「不利益処分を基礎づけるような具体的証拠は何もない。感染症対策でリーダーシップをとってきた私の解任は、地域医療をないがしろにしている」と文書で反論している。

 吉田病院では大規模なクラスターが発生し、これに関する吉田学長の学内での発言が問題になった。吉田学長は学内会議で「コロナを完全になくすためには、あの病院が完全になくなるしかない」「ぐじゅぐじゅとコロナをまき散らして」と発言したとされる。

 発言を記録した音声データは週刊誌のウェブページで公開された。吉田学長は20年12月、不適切だったと認めつつ「(発言の)切り取られ方が、意図とかけ離れたものと言わざるを得ない」と反論。「吉田病院の閉鎖を望むことを意味するものではない。なくなるしかないのは吉田病院ではなく、吉田病院の新型コロナだ」と釈明していた。

 旭川医大の役員会は複数の関係者の説明を踏まえ、古川氏が吉田学長の音声データを録音して漏えいしたと判断した。古川氏は漏えいを否定した上、吉田病院からの新型コロナ患者受け入れを主張した際、吉田学長から病院長の辞任を迫られたことを明らかにした。

 吉田学長は記者会見で、吉田病院に対する発言について「不適切だった」と改めて謝罪した。一方、吉田病院からの患者の受け入れを促す古川氏の進言を退けたのは「当時は重症者用病床以外に感染防止策がとられた病床はなかったためだった」と説明した。

 大学側は古川氏の言動などについて「大学の制度に即したものではない」と判断し、内部告発ではなく公益通報者にも該当しないとしている。院長辞任を迫ったとされる学長の発言についても「患者の受け入れ態勢が整っていなかった院内の客観的な状況などを考えると、パワーハラスメントには当たらない」との見解を示した。

 吉田学長の一連の発言を巡り、文部科学省はパワハラに該当するかどうか、調査している。萩生田光一文科相は26日の閣議後の記者会見で「(言動について)同大に事実関係の確認を求めており、回答を得た。現在その内容を精査しているところで、引き続き確認を進める」と述べた。【横田信行】

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