旭医大学長「強権」の訳は 中央とパイプ、政治力抜群 在任14年近く、発言力絶大

旭医大学長「強権」の訳は 中央とパイプ、政治力抜群 在任14年近く、発言力絶大
北海道新聞 2021/2/1(月) 6:11配信

 【旭川】新型コロナウイルス感染者の受け入れを求めた旭川医科大病院長に辞任を迫ったとして文部科学省の調査を受けている同大の吉田晃敏学長(68)。遠隔医療など時代を先取りした取り組みで中央官庁とのパイプを構築し、同大出身で初の学長に就いた後も国の補助金獲得など大学経営で手腕を発揮してきた。ただ学長在任が国立大で異例の14年近くとなる中、学内で「絶大」な権力を握り、強引とも言える病院長解任につながったとの見方も出る。背景には学長任期の上限撤廃など構造的な問題もあるようだ。

 「学長がいて、その下に病院長がいる。明確な上下関係がある。以前の病院長の時も上下関係がはっきりする中でスムーズなコミュニケーションが絶対に取れていた」。吉田氏は1月26日、コロナ患者受け入れ問題で対立した古川博之病院長の解任を発表した記者会見で、学内の序列を前面に出し、受け入れを認めなかった自らの正当性を強調した。傍らには以前の病院長で、古川氏解任を決めた大学理事2人も並んでいた。

 吉田氏は1973年開学の旭医大の1期生。眼科が専門で、80年代に米ハーバード大に留学し、先端医療に触れた。92年に旭医大卒で初の教授になるとハーバード大とも連携して遠隔医療の研究を本格化させ、99年に学内に設置された国内初の遠隔医療センターの初代センター長に就いた。

■遠隔医療で脚光
 当時は医師数が過剰だとして国が大学医学部の合理化を進め、各大学が生き残り策を模索していたが、旭医大のITを駆使した遠隔医療研究はへき地医療を支える最先端医療と脚光を浴び、国内では「独壇場」に。国会議員や官僚などの視察が相次ぎ、吉田氏は中央と太いパイプを築くとともに学内での発言権を高めたとされ、旭川医大教授の1人は「厚生労働省や文部科学省だけではなく、IT推進で総務省にも食い込み、資金を引き出してきた。政治手腕で学長の右に出る者はいない」と言い切る。 

 吉田氏はこうした実績を背景に2003年、初めて学長選に立候補。大阪大出身の教授に敗れたが、04年に国立大が法人化され、国から自立した大学経営を求められるようになる中、07年に再び学長選に挑み、現職再任を阻んで旭医大出身で初の学長に就任した。

■任期上限を撤廃
 学長任期は法人化以前、最長2期6年(1期目4年、2期目2年)とされてきた。だが、旭医大は吉田氏就任後の09年、「法人化で環境が変わる中、再任2年は短すぎる。トップは経営者にならなければいけない」として「任期は4年とし、再任を妨げない」とする学長選考規程の運用を始め、任期の上限を撤廃した。

 国公立大で学長の任期に上限を定めていないのは少数で、大半は最長6年だが、吉田学長は11、15、19年と対抗馬が出ない中で無投票選出を重ね、今は4期目。旭医大の別の教授は「すべてが学長の一声で決まる。おかしいと思っても表だって誰も言わないし、言えない」と明かす。

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