“パクリ大国”中国でまたもや「盗作アート」が登場! 作った美大教授の無理すぎる「言い訳」

“パクリ大国”中国でまたもや「盗作アート」が登場! 作った美大教授の無理すぎる「言い訳」
クーリエ・ジャポン 2021/2/1(月) 19:00配信

ウサギのキャラクター「ミッフィー」にアヒルのくちばしをつけたアート作品が中国で物議を醸している。作者の美大教授は「盗作ではなく流用をもとにした創作」と主張するが、近年は中国でも著作権への意識が浸透しつつあり、大きな批判を呼んでいる。

中国8大美大の一角である、広東省・広州美術学院の教授で、跨媒体芸術学院長(インターメディア学部長)を務める馮峰(フォン・フォン)の作品が、1月15日以降、オンラインで騒動に発展している。

広州市の日刊紙「南方都市報」によると1月1日、同市中心部の高級画廊・学有緝煕(XYギャラリー)で、馮峰の個展「鴨兎元旦(ラビットダック・エッグ)」が開幕した。展覧会は、観覧無料で子供も親しめる動物のキャラクターがテーマということもあり、連日、家族連れやカップルが会場を訪れている。

「鴨兎(ヤァトゥ)」とは、馮峰が考案したウサギのキャラクター。その名の通り、黄色い鴨(アヒル)のくちばしを備えた兎(ウサギ)という容貌だ。ただそれは、どこからどう見ても、世界的なウサギのキャラクター「ミッフィー」そのもの。

ミッフィーは、オランダのグラフィックデザイナー、ディック・ブルーナ(1927〜2017年)が1953年に描いた絵本『ナインチェ』に登場する、擬人化されたウサギの主人公「ナインチェ・プラウス」のこと。英語でミッフィー、日本語でうさこちゃん、中国語で米菲兔(ミィフェイトゥ)などと呼ばれ、50以上の言語に翻訳され、絵本の販売数は累計8500万部超。英国のピーターラビットと並び、世界で最も有名なウサギと言える。

広州の個展で人々が問題視したのは、馮峰の「鴨兎」はどれも、ブルーナが描いたミッフィーとまったく同じ構図で描かれている点だ。ミッフィーの「×」型の口に代わり、アヒルのくちばしをくっつけただけという安易な“創作”に、多くの中国人ネットユーザーが「厚顔無恥!」と怒りをぶつけた。

「盗作ではなく流用」なのか?
作者の馮峰は1991年に国立の広州美術学院を卒業し、マルチアーティストとして絵画、彫刻、インスタレーション、映像芸術、パブリックアート、小説など多方面で作品を発表している。母校の教授となった後、2010年にインターメディア学院(学部)を設立し、現在は学院長(学部長)の要職にある公人だ。
“パクリ大国”の汚名を着せられて久しい中国も、最近は著作権や知的財産権(IP)保護の意識が少しずつ浸透しており、「剽窃」「盗作」がクリエイターやオリジナルコンテンツ、関連産業に大きな損害を及ぼすだけでなく、コンテンツ市場で悪銭が良貨を駆逐してしまうことから、若者世代を中心に「黙認してはならない」という価値観が共有されつつある。「鴨兎」も、ミッフィーのオリジナルとの比較画像が瞬時にネットで広まり炎上した。
1月16日、馮峰は「鴨兎は盗作ではない、流用だ」との声明を発表。そのなかで、次のような主張を展開した。

「私の作品を通し、多くの人々が現代芸術に興味を示してくれたことに感謝している。現代芸術において破壊的な思考、拝借、コラージュ、解体は慣習だ」

「社会的に広く認知された商業的シンボルはすべて、公に属している。それらはアーティストの創造の源であり、それらのシンボルがどのように社会に浸透したかを探ることは研究の一種でもある。鴨兎の創作は、ある種の社会的実験」

「社会的に広く認知されたシンボルは、すべての公共活動で使用できる。社会的に広く認知されている即ち公共物だからだ」

「鴨兎は、心理学者のジョセフ・ジャストロウが考案し哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインが引用した、アヒルの頭にもウサギの頭にも見える錯視の図にインスピレーションを得て1995年に創作した私の完全なオリジナルだ」
「鴨兎はウサギの“新種”とも言える、平面だけでなくフィギュアや、家族と23人のクラスメートを設定するなど独自の要素を加えた」

馮峰は著作権や知的財産権の侵害については「それは法が決めることだ。心配しないでほしい。商標権侵害には当たらない」と述べ、自身への批判は筋違いとした。

「剽窃と流用は異なる。剽窃、盗用する人は、オリジナルを変更してオリジナルのイメージを隠そうとし、剽窃を気付かれるのを恐れ、それほど有名ではない作品をターゲットにすることが多い。鴨兎はあくまで流用だ」

「芸術の社会的意義は人々の創造性を刺激すること。芸術作品が私たちの思考を刺激することから、思考は創造性の源。でも、言葉による熾烈な個人攻撃は、あなた方自身の言語が貧弱であることを示すだけ。ネット攻撃にふけるための貧弱な言語は、自ら表現し、思考する能力を失う」

社会的に広く認知されているミッフィーは既に公の共有物であり、誰もが知っているから、誰もが自由に解釈して再構成できるという主張とネットユーザーに対する苦言は、かえって騒動の火に油を注いだ。

批判殺到だが擁護の声も
「ミッフィーにくちばしを追加すればミッフィーではない創作と見なされるってどんな理屈?」

「ひどく傲慢で、ある意味、勇敢」

「国民総生産(GDP)世界2位でも、国立大学の教授で学部長が率先してモラルを破壊するのが中華人民共和国なのだよ」

「真剣に超ナンセンスな屁理屈を並べるアーティストは、もはや尊敬に値する」

「これも、護犢子(フゥドゥズ:我が子を徹底弁護するなど盲目愛に対する侮蔑表現)という自己弁護の国民病だ」

「そこまで言うなら、“ミッキー・ダッグ”や“ドナルド・ラビット”を創作し、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーに対しても同じ主張をしてみろ」
ディック・ブルーナの版権を管理するオランダ・アムステルダムの出版社メルシス・パブリッシングは、馮峰の創作について「明白な盗作」で、「彼の主張は世にも奇妙な言い逃れ」と一刀両断。ニュースサイト「RTLニュース」の取材に対し、同社のディレクター、マルヤ・カーホフ氏はこう答えている。

「誰がどう見ても、ミッフィーと鴨兎はまったく同じデザインであり、鴨兎はミッフィーをトレースしたもの。アーティスト自身が個展を企画し会場を策定したという事実は行き過ぎで、憤慨している。ミッフィーは中国でよく知られており、われわれは中国で多くのイベントを行い、中国版絵本も出版している。だから、馮峰氏がミッフィーを知らないということはあり得ず、彼もそうは主張していない」

カーホフ氏によるとメルシス・パブリッシングは馮峰宛に「盗作ではなく、自分自身の芸術の創作に心血を注ぐべきだ」と記した手紙を送ったという。

香港人アーティスト張子言(アーネスト・チャン)は香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」に対し、「鴨兎はれっきとしたアートだ」と述べた。張自身も、『ピーナッツ』『ドラゴンボール』『サウスパーク』『セーラームーン』『ワンピース』などの人気漫画のキャラクターを、中国伝統芸術の技法で絵画、刺繡、彫刻に取り入れた作品で知られるようになった。
「一般にアーティストは、人々が作品のモチーフを認識できないことを恐れ、非常によく知られているオリジナルを使用する傾向があります。人々がオリジナルを認識できない場合、それを取り入れた意図も理解されないので、作品は失敗だ」

「私の作品を含むこれらのアートワークは、ポップカルチャーの人気キャラクターやロゴマーク、シンボルから導き出されていますが、オリジナルとは大きく異なる独自のアプローチで再コンテキスト化されている」

剽窃・盗用、模倣、オマージュ、パロディの差異は微妙だ。主張する者、受け取る者によって解釈が異なる。重要なのは、そこにオリジナルに対する確かな敬意が感じられるかどうかだろう。(Text by Jun Tanaka)

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