肌着に校則、色柄を指定 広島県内公立高の6割 茶色髪や天然パーマ届け出も

肌着に校則、色柄を指定 広島県内公立高の6割 茶色髪や天然パーマ届け出も
中国新聞デジタル 2021/3/28(日) 9:00配信

 広島県内の公立高の6割が校則でシャツなど肌着の色柄を指定していることが27日、中国新聞の調べで分かった。頭髪では3割弱が、茶色やカール髪である場合などに、生まれつきの色・形状を届けさせている。人権意識をより高め、多様性を認め合う社会が求められる中、専門家からは「いずれも人権侵害につながりかねない」との指摘も。学校と生徒・保護者が主体的に見直す必要性が高まりそうだ。

 県のほか市立高のある広島、福山、呉の3市へ情報公開請求し、各校の「生徒指導規程」などを入手して調べた。公立の高校(全日制)と中等教育学校計88校のうち、57校(64・8%)でTシャツやタンクトップなど肌着や下着の色柄に関する記述があった。白、グレー、ベージュの無地などの指定や白と限定する学校もある。制服から透けにくくするためとみられる。

 頭髪では、ほとんどの学校が染色やパーマを禁止。その上で26校(29・5%)は、髪が生まれつき茶色や天然パーマの生徒に「地毛登録」を求める。美容師が用いる髪の色見本と照合して記録する学校もある。

 広島弁護士会の子どもの権利委員会メンバー川崎浩介弁護士は、他者から直接見えない肌着の色を規制することは「人権の侵害に当たる」と指摘。学校が肌着の色を点検することは「教員と生徒が同性であっても人権を侵すこと」と述べる。

 地毛登録については、「髪は普段から見えているのだから問題ない」との認識は誤りで、体に関わる私的な情報を開示させる行為だという。「黒い直毛が『普通』との画一的な価値観に縛られていないか。多様性を認め合う社会を目指そうとする中、見直しが必要ではないか」と提言する。

 近年、校則に対する社会の関心は高まっている。髪の黒染めを強要されたとして大阪府立高の元生徒が損害賠償を求めた訴訟などをきっかけに、問題視する声が上がる。佐賀県教委が24日、県立高などに求めていた校則の見直し状況を公表。肌着や下着の色の確認は「人権侵害」として廃止し地毛登録もやめた。長崎県教委も2日、学校に見直しを促す通知を出している。

 こうした動きに対し、広島県教委の豊かな心と身体育成課は「学校は集団生活の場であり、一定のルールは必要」とした上で、「内容については社会情勢や保護者の意識の変化を考慮して見直すよう、長年、各校に指導してきた」と説明する。

 保護者の要望を受け、県教委は2019年度、それまで禁じていたスマートフォンの校内持ち込みを容認。冬季のタイツ着用を許可するなど学校単位での改善も進んでいる、とする。ただ、肌着や頭髪を巡る校則に目立った変化はない。「学校が荒れるのを防ぎ、落ち着いた学習環境を与えたい」「社会で求められるマナーを身に付けてほしい」「就職などで不利にならないようにしたい」。教員たちからは、そんな声が漏れる。

 生徒指導・教育相談を専門とする広島大の栗原慎二教授は「学校はいつも、地域の視線にさらされ、風紀が乱れていると判断されれば責めを負う。厳しい校則は、社会のニーズに応えるための消極的な選択なのだろう」とみる。

 その上で栗原教授は「生徒指導とは本来、校則を守らせることではない。ルールの必要性を説明したり、納得できない子どもの声をよく聞き、どうしたらよいか一緒に考えたりすることだ。その積み重ねが、主体的に社会と関わる生徒の姿勢も育む」と指摘する。

 県教委は「多様性の大切さを踏まえ、各校が校則について、生徒や保護者と意見交換を重ねることができるようサポートしていきたい」としている。

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