ボート協会、被害学生の訴えを不問に 仙台大漕艇部・パワハラ問題

ボート協会、被害学生の訴えを不問に 仙台大漕艇部・パワハラ問題
河北新報 2021/5/23(日) 7:50配信

 仙台大漕艇部監督の教授(58)がパワーハラスメント行為を指摘されている問題で、被害に遭った男子学生が内部通報制度に基づき日本ボート協会(東京)に調査を求めたものの、十分な調査もなく不問に付されていたことが、河北新報社の取材で分かった。

 学生は2020年9月、ボート協会の内部告発相談窓口に音声データを送付。データには、監督が机をたたくような威圧的な音を出しながら学生を叱責(しっせき)している場面や、「ふがいない」と学生の人格を否定する発言が収録されていた。

 協会からの調査結果の文書は同11月に学生の元に送付された。パワハラに関して「貴殿と監督の事実関係に対する認識に大きな隔たりがある」とし、任意調査や遠隔地であることを理由に「事実関係を認定することには限界がある」と記載されていた。「新たな紛争、混乱を招きかねない」と、ごたごたになることを避けるために調査を打ち切るとも受け取られかねない内容も書かれていた。

 協会の内部通報規定では、パワハラやセクシュアルハラスメントといった不正行為の早期発見と是正を図ることが明記されている。協会の担当者は取材に「適切に対応した」と話した。

 学生は19年4月から半年近くにわたって監督からパワハラを受けたとして、松山地裁今治支部に約4400万円の損害賠償を求めて提訴。協会に送ったものと同じ音声データを証拠提出している。

 1984年ロサンゼルス大会など五輪ボート競技に3大会連続出場し、日本代表のヘッドコーチ(HC)も務めたが学生にパワーハラスメント行為を指摘されていたことが、河北新報社の取材で分かった。学生は深刻なストレス障害を発症して大学に退学届を提出した。
■重度ストレス障害に
 学生は現在、愛媛県内の実家に戻っている。大学側とに約4400万円の損害賠償を求める訴えを、松山地裁今治支部に起こした。
 訴状などによると、教授は2019年4〜9月、部活でミスをした学生に「君はばかか」「君の頭は腐っているんだ」「お前のようなコックス(舵手)は必要ないんだよ」と怒鳴りつけたり、ささいなことで部員全員の前で謝罪するよう強要したりした。
 監督の部屋に呼び出した際には、ノックや返事の仕方などに難癖を付けて机をたたきながら説教し、約20分間立たせて放置したこともあった。
 恒常的な叱責(しっせき)によって学生は教授を前にすると動悸(どうき)や過呼吸気味になり、19年10月に退学届を提出。その後、重度ストレス反応と適応障害と診断され、20年12月に精神障害者保健福祉手帳(2級)の交付を受けた。「一般就労継続が困難なレベル」という。
 学生は「監督は五輪選手であり、コーチでもあったので信用していた。裏切られた。自殺を考えるほどつらかった」と話す。
 教授はし、12年ロンドン五輪では日本代表のHCを務めた。仙台大でスポーツ指導の基礎などを学生に教え、アイリスオーヤマのボート部では五輪代表の指導にも当たる。
 教授は河北新報社の取材に「裁判を通して(事実関係を)明らかにする」と回答。松本文弘副学長は「学生と見解が異なる部分がある。裁判で明らかにしたい」と語った。

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