近大元主任教授、調査法解剖でも200万円詐取か 内部調査で判明
毎日新聞 2021/11/7(日) 19:00配信
近畿大医学部法医学教室を巡る司法解剖の検査料詐取事件で、元主任教授の巽信二被告(67)=詐欺罪などで公判中、懲戒解雇=が明確に犯罪性がうかがえない場合に実施する「調査法解剖」でも、大阪府警から計約200万円の検査料をだまし取っていた疑いがあることが、大学の内部調査で判明した。解剖は府警が同教室に委託し、費用は国と府で負担していた。府警は新たな不正も把握しており、立件の可否を慎重に検討している。
「調査法解剖」は2013年に施行された死因・身元調査法に基づくもので、犯罪死の見逃しを防ぐ目的で導入された。犯罪性が高い場合に実施される司法解剖とは異なり、警察署長の判断で裁判所の令状や遺族の承諾なしに実施できる。担当する法医は必要に応じて薬毒物やウイルスなども検査し、死因を究明する。
府警は司法解剖と同様、調査法解剖も近大の法医学教室に委託。十数項目に及ぶ検査項目ごとに単価が決められており、大学側は検査に関する報告書を作成し、府警に費用を請求する仕組みになっている。
大学関係者によると、法医学教室の一連の不正を調査する過程で、同教室が調査法解剖でも計約200万円の検査料を府警に水増し請求し、大学側が費用を不正に得ていたことが発覚した。請求書は巽被告の部下だった元講師(66)=懲戒解雇=が作成。巽被告が不正を主導したと認定したという。元講師は司法解剖の検査料詐取で巽被告と共謀したとして詐欺罪で起訴されており、同様の手口だったとみられる。
毎日新聞が府警に情報公開請求して開示された資料によると、近大は15〜20年度、32遺体の調査法解剖で検査料を府警に請求。費用は近大側の申告通り、計約900万円が支払われていた。府警は逐一、検査が実施されたかどうかチェックしていなかったとされる。
捜査関係者によると、請求書の一部は偽造されていたが、死因を判断した解剖結果に虚偽の記載は確認されておらず、捜査への影響はないという。
巽被告は府警の依頼を受け、約40年間に約4000件の司法解剖に携わってきたが、定年退職の直前だった21年3月に不正が判明。15〜21年に司法解剖の検査料計約5100万円を府警から詐取したほか、医療用品の購入を装って大学から経費をだまし取ったとして詐欺罪などで起訴された。10月27日に大阪地裁であった初公判では経費詐取の起訴内容は認めたが、検査料詐取は無罪を主張した。経費詐取の総額は新たな追起訴分を含めて約4900万円に上っている。
一方、大学は外部の弁護士らで構成する調査委員会を発足させ、現在も不正の有無を過去にさかのぼって調査している。8月に公表した中間報告書では、巽被告が関与した不正の総額は少なくとも約1億4500万円に上ることを明らかにしている。【沼田亮、木島諒子】
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