「あの人の送迎イヤや」無言で胸触るしぐさ、母親はすぐに気付いた…男に懲役10年判決

「あの人の送迎イヤや」無言で胸触るしぐさ、母親はすぐに気付いた…男に懲役10年判決
読売新聞オンライン 2021/12/16(木) 14:16配信

 「知的な障害のある少女が未熟だと知りながら、犯行を繰り返した」。に、高松地裁は懲役10年の実刑を言い渡した。小学生だった少女に対し、2年5か月に及んだ犯行。障害児の信頼につけ込む性的虐待は後を絶たない。(畝河内星麗)

 「あの人の送迎、イヤや……」。少女は今年1月、自宅で、ためらいながらも、母親に男への嫌悪感を初めて口にした。

 障害があり、知能は6歳程度。「どうして?」と母親が尋ねると、少女は無言のまま自分の胸を触るしぐさで表した。母親はすぐにわいせつ行為だとわかり、香川県警に被害届を出したという。

 判決によると、男は2018年8月〜今年1月、高松市内のマンションの非常階段などで、9〜12歳だった少女に乱暴したり、わいせつな行為をしたりし、その様子をタブレット端末などで撮影していた。少女の母親の証人尋問によると、少女は難しい言葉を理解できず、物事をはっきり伝えるのも苦手。小学2年の頃から、男が運営する放課後デイを利用していた。

 「誰にも言っちゃだめだよ」。施設長だった男は少女に口止めした上、送迎時の車内や施設付近のアパートなどでわいせつ行為に及んでいたという。

 少女はしばらく小学校にも通えなくなった。母親は「信頼して娘を預けていたのに、絶対に許せない」と憤った。

 被告人質問などで、男は施設の利用期間が長かった少女に「特別な思い入れがあった」と説明。少女の障害について「自分の意思を言えず迎合的なところがあった」とし、「嫌がっていないと勘違いした。スキンシップの延長だと思っていた」と語った。

 検察側の求刑は懲役13年。近道暁郎裁判長は9月の判決で、「常習性が高く、少女の人格を全く考えない極めて悪質な犯行」と指摘。男は控訴せず、判決は確定した。

支援体制の確立課題

 障害のある子ども(6〜18歳)が施設などで性被害に遭うケースは全国で相次いでいる。

 読売新聞が今年7〜8月、計156の自治体に行った調査では、20年度までの5年間に逮捕されるなどした放課後デイ職員は25人、被害に遭った子どもは39人。内閣府が被害者支援を行う14団体に行った調査(2017〜18年)でも、30歳未満への性暴力127件(放課後デイ以外を含む)のうち70件で被害者に障害があった。刑事裁判での実刑判決も目立つ。

 一方、働く女性が増え、放課後デイなどの利用児童は増加傾向にある。14年度は約17万人だったが、19年度は2・3倍の約39万人となった。

 性暴力をなくすための啓発活動に取り組むNPO法人「しあわせなみだ」の中野宏美理事長(44)は「障害者は、信頼を置く支援者が特別な存在になりやすく、その信頼関係を悪用する加害者が多い」と指摘。「障害者の性被害はあまり認知されておらず、公的な相談窓口や支援体制が確立していない。今後の国の対応に期待したい」と語る。

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