【独自】わいせつ教員復職を厳格化へ…免許再取得に更生証明提出、処分情報をデータベース化
読売新聞オンライン 2021/12/19(日) 5:00配信
5月に成立した新法「教員による児童生徒性暴力防止法」に基づき、文部科学省が策定した「基本指針案」の全容が明らかになった。子供へのわいせつ行為で教員免許を失効した元教員が免許を再取得しようとする場合、更生したことを証明する書類の提出を求める。失効者の40年分の処分情報をデータベース化するなど、教員としての現場復帰が極めて難しくなる見通しだ。
指針の決定後、来年4月1日に新法を施行する。データベースは2023年4月に稼働させる予定だ。
冒頭、指針案では「児童生徒を性暴力の犠牲者とさせない断固たる決意」を掲げ、教育委員会や学校法人、学校が取るべき具体的な対応を示している。
指針案の柱となるのが、免許失効者への再交付の可否を判断する仕組み「再授与審査」だ。現行では性暴力で懲戒免職・解雇されても、3年たてば免許を再取得できる。だが、新法施行後は都道府県教委が新設する再授与審査会の判断を求めることになる。
その際、再交付に支障がないことを立証する責任を元教員に負わせ、「再び性暴力を行わないことの高い蓋然性を証明する」書類の提出を求めている。
具体的には、更生プログラムの受講歴や医師の診断書、復職を求める保護者らからの嘆願書、被害者への謝罪、損害賠償などの書類を例示した。さらに、医療や心理、福祉、法律の専門家らで構成される審査会で、委員の意見が原則、全会一致しなければ再交付を認めないとしている。
新設するデータベースには、子供への性暴力で免職となった元教員の名前や処分内容の情報を少なくとも40年間分蓄積する。これまでには、処分歴を隠すために改名し、別の教委で採用された例もあるため、改名前の氏名での検索も可能とする。都道府県教委に対し、法施行前の処分情報も入力してもらい、採用時の活用を義務付ける。
このほか、わいせつ行為をした教員への懲戒処分を行わず、依願退職させることも禁じている。
文科省は近く基本指針案を公表する。パブリックコメント(意見公募)を経て、来年2月頃に決定する考えだ。
現行法の「穴」に高いハードル
文部科学省の基本指針案は、教員の立場や信頼を悪用し、子供たちを傷つけることを決して許さないという強い姿勢を示している。
現行法では、児童生徒らへの性暴力で教員免許が失効しても、3年たてば再取得できる。指針案ではその「穴」に対し、再交付を申請した元教員本人に「再び行う可能性は全くない」ことを客観的に立証させる高いハードルを設けている。
わいせつ教員を巡る一連の問題では、教員からの性暴力によって、心に深い傷を負い、大人になっても苦しみ続ける被害者の姿を見た。わいせつ行為に及ぶ教員は全体のごく一部だが、1人の子供も被害に遭わせてはならない。
基本指針案の冒頭には、子供を性暴力から守り抜くことは教員だけでなく、「全ての大人の責任である」と記した。教育現場がこの指針を順守するのはもちろん、被害を未然に防止するため、社会全体で様々な対策を講じていくことが必要だ。(教育部 伊藤甲治郎)