生徒、保護者の訴えも…高校教諭がわいせつ行為も処分せず定年退職 県教委「疑いでも直ちに報告を」

生徒、保護者の訴えも…高校教諭がわいせつ行為も処分せず定年退職 県教委「疑いでも直ちに報告を」
NBS長野放送 2022/1/17(月) 12:16配信

長野県の県立高校の教諭が生徒にわいせつ行為をしたにも関わらず、処分を受けず退職していた問題を受け、県教委は性暴力が発生した際の報告の手順などをまとめました。

県教委はこのほど、学校内で児童生徒への性暴力が疑われる事案が起きた際、「速報として直ちに県教委に報告を提出する」などとする手順をまとめました。

3年前の8月には、県立高校の男性教諭が車の中で女子生徒の手を握ったり、耳たぶを触るなどのわいせつ行為をしたにも関わらず、生徒から申し出があった校長も、保護者からの訴えがあった県教委も調査や処分をせず、教諭が定年退職していたことが後になって発覚しました。

今回の手順では、事実確認前に直ちに県教委に報告することを明記し、その後、県教委が懲戒処分を検討する処分委員会に報告するとしています。

児童生徒の訴えがなくても「疑い」があるケースも含まれます。

県教委は「児童や生徒の訴えが途中で消えることがないようにしたい」として、再発防止に努めるとしています。

 長野県教育委員会は24日、2019年に生徒にわいせつ行為をした北信地域の県立高校の男性教諭に関する検証報告書を公表した。当時の校長は県教委に報告せず、保護者からの申し立てを受けた県教委高校教育課も十分な調査を行わずに、わいせつ事案には該当しないと判断していた。県教委は同日、当時の同課長を減給10分の1(3か月)、校長を同(2か月)の懲戒処分にしたが、教諭は20年3月に定年退職しており、処分の対象外。
 検証報告書によると、元教諭は19年8月、生徒を県内の日帰り温泉施設に誘い、生徒は断り切れずに出掛けた。別々に入浴したが、帰りの車内で生徒の手を握ったり、耳たぶを触ったりし、「卒業したらつながりたい」などと言った。生徒は翌日、別の教諭を通じて校長に申し出たが、校長は生徒が保護者に伝えないでほしいと求めたことなどから県教委に報告しなかった。
 約1か月後、生徒から事情を聞いた保護者が県教委高校教育課を訪れ、再発防止を訴えたが、懲戒免職までは求めなかった。同課は関係者への聞き取りを十分に行わず、校長からの報告などに基づき、「わいせつ・セクハラ行為とまでは至らず、処分を検討する案件ではない」と判断した。元教諭は精神疾患で休業が必要との診断で、同年10月から療養休暇を取得。そのまま20年3月に定年退職した。
 今年2月に県コンプライアンス・行政経営課に通報があり、問題が発覚。8月以降、弁護士らで構成する会議を4回開いて問題点と再発防止策を検討してきた。
 検証報告書では、▽元教諭の行為はわいせつな行為に該当し、懲戒処分を行うべき案件だった▽保護者の申し立てがあるまで校長が県教委に報告を怠ったことは不適正な事務処理で、事案の隠蔽(いんぺい)と捉えざるを得ない▽高校教育課が十分な聞き取りを行わず、わいせつな行為に至らないと判断したことは不適正だった――とし、わいせつ行為への認識が甘く、児童生徒の人権保護の観点が不足していたなどと結論づけた。
 再発防止策として、▽児童生徒や教職員が声を上げるための仕組みの強化と充実▽学校長は県教委が懲戒処分を決定するまでの間、性暴力などを受けたと思われる児童生徒と教職員との接触を回避▽教職員の規範意識を醸成する研修の実施――などを挙げた。
 原山隆一教育長は24日の記者会見で、「懲戒処分にすべきところを誤った判断により処分せずに退職させた。県民の信頼の根幹に関わる重大な事態で、心からおわび申し上げる」と陳謝。「学校現場で児童生徒の尊厳を保持し、権利利益を擁護するということが共通認識として徹底されていなかったことが最大の問題だった」と語った。
 その上で、原山教育長は「直属の部下である高校教育課長の非違行為のため、管理監督者としての責任は重い」として、自身の給与の10分の1を3か月分自主返納する考えを示した。

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