富山大学附属小学校でのいじめ 調査結果出るまで4年経過
北日本放送 2022/4/6(水) 20:22配信
富山大学の附属小学校で過去にいじめがあり、第三者委員会による調査が行われましたが、調査結果が出るまでに4年近くかかり、児童の在学中に明らかにされなかったことがわかりました。
被害者の母親
「どれもつらいですね、保護者の立場からすると自分の子どもが安心安全に登校できていないこと。心が休まる、心配しない時間の方が少なくなっていきましたね」
悲痛な思いを訴えるこの女性の子どもは、当時の富山大学人間発達科学部附属小学校に在学中、他の児童から無視され続けたり、消しゴムのかすが入れられたスープを飲まされそうになったりするなどの嫌がらせを受けました。
女性の子どもは医師から登校不可能な状態と診断され、1か月以上欠席しました。
いじめ防止対策推進法では、いじめで心身などに重大な被害が生じた疑いがある場合や、30日以上の欠席を余儀なくされている疑いがある場合を「重大事態」としています。
文部科学省は「重大事態」が発生した場合、速やかに第三者委員会を設けて調査することを求めています。
学校の運営母体の富山大学は、外部の弁護士や医師などによる第三者委員会を設けて調査を行い、女性の子どもが数年間にわたっていじめを受けたと認定しました。
また、小学校の教諭が「証拠がない」「事実が確認できない」として、いじめを放置していたと指摘しました。
さらに女性が大きな問題だと話すのが、第三者委員会の設置の遅れと、結論が出るまでに長い時間がかかったことです。
被害者の母親
「中学校に進学することを本人が強く望んでいて、そこに向けて努力をずっと重ねてきた子なので、そのためにいじめの第三者委員会
を要請したわけです。なので、急いでほしいというのは当然伝えていましたし、なぜ設置にそのような時間がかかるか理解し難かったです」
このいじめをめぐっては、児童が登校できなくなってから約1か月半後に、被害者側が第三者委員会設置を申し入れました。
大学が被害者側に、第三者委員会による調査を行うと回答したのは、その1か月後、調査が始まったのは9か月経ってからでした。
そして調査の結果が報告されたのは3年後で、全体で4年近くに及んでいます。
いじめがあったのかどうかという根本的なことも含めて、結論が児童の在学中にもたらされることはありませんでした。
被害者の母親
「思い出すとけっこうつらいです。受験できず(希望の中学校へ)行けないことが決定してしまいましたので…」
小学校は取材に対し「あらゆる問題に学校として真しに対応してきた。児童の欠席が続いた時点では、いじめを把握し富山大学に事態を報告していた」と答えました。
一方、運営母体として第三者委員会を設置した富山大学は「被害児童側から調査報告書を公表してもよいという許可がないため、何も答えない」としています。
いじめ問題に詳しい千葉大学の藤川大祐教授は、第三者委員会の調査開始の遅れが、いじめられた子どもをさらに追い詰めると指摘します。
千葉大学 藤川大祐教授
「調査の開始が遅れれば遅れるほど、進展が遅れれば遅れるほど、学校や教育委員会に対する不信が募っていって、そのこと自体が被害者に苦痛を与えるというふうになっていくんですね」
そのうえで、学校への復帰を第一に考え、速やかな事実の解明が必要だと話します。
藤川教授
「短期間である程度事実確認をして、その後の解決に向けてどういうふうに動けばいいかという提言を出すことの方が求められるはずなんですね。一般的には数か月から1年くらいで報告書を出さないと、あまり意味がなくなってしまいます」
女性は近く、報告書の公表許可を出すとしていて、学校側からの説明や誠意のある謝罪を求めています。
文部科学省のまとめでは、県内では2020年度に小中高校全体で1212件のいじめが報告され、このうち2件が重大事態とされています。
重大事態の報告や第三者委員会の調査は、いじめを受けた子どもに速やかに手を差し伸べるために行われるものです。
女性は、同様のことが繰り返されないよう、教育に携わるすべての人に考えてほしいと話しています。