懲戒免教諭の校名公表基準見直し、検討不十分…「わいせつ事案は除外」規定に反映させず
読売新聞オンライン 2022/11/11(金) 12:35配信
懲戒免職処分になった教諭が勤務する学校名などの公表基準を巡り、静岡県教育委員会が8月に改正する過程で、「わいせつ事案は非公表」「在校生も保護対象」という方針を決めながら、例外規定に反映させていなかったことがわかった。どのわいせつ事案を例外対象とするかも絞り込んでいなかった。県教委は、改めたばかりの基準を再び見直す方針で、検討が不十分で拙速な改正だったことが浮き彫りとなっている。(鍜冶明日翔)
県教委は、教育委員らが出席する7月7日の定例会で公表基準の改正を協議し、8月1日付で改正した。協議の中で、わいせつ事案は被害者が学校と無関係であっても学校名を非公表とする方針を決めたという。
だが、改正後の例外規定は「被害者またはその関係者のプライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある場合」に学校名などを公表しないとしており、わいせつ事案で非公表とすることは明文化されなかった。
改正後の9月21日、県教委は2人の教諭の懲戒免職処分を発表した際、わいせつ事案であることを理由に学校名を非公表とした。非公表とすることを巡り、発表前日の県教委定例会で教育委員の一人から「(例外規定の)『被害者』を在校生全員と解釈できるのか」との指摘が出たという。「被害者」とはわいせつ被害を直接受けた人を指し、在校生全員と解釈することは難しいのではないかという趣旨だったとみられる。
県教委幹部は「被害者が在校生全員を含むことは、改正前から委員の共通認識だった」と強調する。だが、県教委は例外規定を再び見直すことを決めている。現在の表現のままでは「在校生全員を被害者と解釈することは難しい」と判断したという。
また、県教委は、わいせつ事案のうち、どのような罪状の場合に学校名を非公表にするかを決めていないことも分かった。
県外の多くの自治体では、わいせつ事案かどうかにかかわらず、氏名を公表する場合には学校名も公表している。だが、県教委が10月に行った記者会見で、池上重弘教育長は「現在の教育委員のメンバーは、(非公表の方針を)変えるつもりはない」と明言した。一方、県法務課は、「直接被害を受けた人が特定されるなど、具体的な権利利益の侵害がなければ、情報公開請求があれば開示する」と説明している。