先生が”夜のバイト”先で逮捕 「想定外」に教育委員会も困惑

先生が”夜のバイト”先で逮捕 「想定外」に教育委員会も困惑
毎日新聞 2023/4/22(土) 15:30配信

 もしも先生が“夜のアルバイト”をしていたら……。名古屋の繁華街で客引きをしたとして中学校教員が逮捕された。非常勤講師として教壇に立つ一方、ホストクラブでも働いていた。市の正規職員ではないため勤務時間外の副業を認められていたが、市教育委員会は「ホストは想定外だった」と困惑している。

 愛知県警によると、20代の男性教員は2月11日夜、名古屋市中区栄4の路上で、私服の女性警察官に「ホストどうですか」などと声をかけたとされる。不当な客引きを禁じる県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕され、風営法違反容疑で送検された。

 2022年8月ごろから週2、3回、現場近くのホストクラブで働いていたという。「日中は先生、夜はホストや客引きをしていた。ホストに憧れがあったようだ」(捜査関係者)

 ホストの傍ら、市立中で非常勤講師として勤務し、数学を教えていた。週20時間の勤務で、時給は2829円。実家で暮らしていたようで、生活に困っている様子はなかったという。

 市教委の担当者は「学校で問題になるような行動もなかった。真面目に教えていたと聞いた」と語る。

 地方公務員法は、公務員が任命権者の許可なく、営利企業に従事するのを禁止している。ただ、非常勤の職員については「この限りではない」とされ、フルタイムで働いている職員でなければ、兼業や副業が許される。

 副業として認められる職種とそうでない職種に明確な線引きはない。職務専念義務や信用失墜行為の禁止といった法律で定める服務規律が適用されるだけだ。

 文部科学省の担当者は「例えば反社会的な組織に関われば、明らかな信用失墜行為に当たる。社会通念上どう捉えられるかを踏まえ、各教育委員会が判断することだ」と説明する。

 ◇「教員収入だけでは生活できない」

 名古屋市内の市立中で非常勤講師を務める30代後半の男性によると、若手には教員以外の仕事もしている人が多い。音楽教室や塾の講師のように本業に近いものから、スポーツショップやすし店、スーパーの店員まで職種はさまざま。

 「教員としての収入だけでは生活できない。仲間うちでは『ばれなければ(夜の仕事を)やる人いるよね』という声もあった」

 副業や兼業をする場合、スケジュール調整などのため、校長に自己申告するのが通例。しかし今回のケースで勤務先の中学や市教委は、男性教員がホストのアルバイトをしていることを把握していなかった。

 名古屋地検によると、男性教員は3月3日に処分保留で釈放された。市教委は今後、本人からの聞き取り調査も踏まえ、処分を検討する方針。ただ問題視されているのは、ホストとの兼業ではなく、あくまで逮捕容疑の客引き行為だ。

 市教委の担当者は、副業が認められる職種について「これはダメ、これはOKなどと一概には言えない。職業差別や人権侵害になりかねない」と話す。想定外の事態だったため、対応に苦慮しているという。

 「ホストという副業をどう捉えるか非常に悩ましい。今後は一定の規定を設けることも検討するが、そう簡単には決められない」【田中理知、熊谷佐和子】

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