自慰行為強要、動画流出、自殺未遂…それでも教育委員会は「いじめ」と認定しなかった旭川女子中学生いじめ凍死事件は「こども庁」創設を後押しした

自慰行為強要、動画流出、自殺未遂…それでも教育委員会は「いじめ」と認定しなかった旭川女子中学生いじめ凍死事件は「こども庁」創設を後押しした
集英社オンライン 山田太郎 2023.08.18

こどもの虐待や不登校、自殺者が多発する日本の厳しい現状を「こども緊急事態」として発足した「こども家庭庁」。その創設のために奔走した筆者が「こども庁」が必要だと考えた理由を語る。『こども庁ー「こども家庭庁創設」という波乱の舞台裏』(星海社)より一部抜粋・再構成してお届けする。

さらに、野田市教育委員会がアンケートのコピーを父親に渡してしまうという問題も起こりました。2018年12月末には、心愛さんは親族宅から父親が待つ自宅へ戻され、その後ひと月もしない間に、度重なる虐待を受けて、命を落としました。

その間、管轄の柏児童相談所は家庭訪問さえしないままでした。心愛さんの対応をしていた柏児童相談所は、管轄する地域の人口が130万人(2015年国勢調査)とカバーする範囲が当時の他の児童相談所と比べて平均(60万人程度)を大きく上回っていた問題も、浮き彫りになりました。

いじめ防止対策推進法は、議員立法で2013年6月に成立しています。しかし、せっかく制定された法律が全く機能していない状態だったわけです。この法律の所管は文部科学省でしたので、私は当時の文部科学大臣とも事前に連絡をとり、旭川市教育委員会等への指導や助言を徹底してほしいと要請しました。大臣からは、「文部科学省からは、すでに担当課長を旭川に派遣した」との返答でしたが、それでも事態は変わらず、何も解決されていなかったのです。

旭川市教育委員会からのヒアリングでは、次のような回答がありました。

「爽彩さんが川に飛び込んだ事件は把握しているが、関わった児童との関係や警察からの情報を総合的に判断し、いじめという認定はしなかった」

爽彩さんの事件では、警察が捜査を行う事態にまでなっており、2021年4月に、この事件は「重大事態」と認定されているのに、なぜ「いじめではない」ということになるのか。第三者委員会の公平性や中立性も疑われるものがありました。

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