副学長の論文に「自己盗用」疑い 京都工繊大が調査委を設置
毎日新聞 2023/11/24(金) 17:53配信
京都工芸繊維大(京都市)の副学長が著者を務めた学術論文に、研究グループとして過去に発表した成果を適切に引用せず使い回した疑いがある問題で、同大が調査委員会を設置し、論文を調査する方針を決めたことが、大学への取材で判明した。
大学関係者によると、副学長が2000〜20年度に著者を務めた複数の論文に「自己剽窃(ひょうせつ)(盗用)」などの疑いがあるとの内部告発が今年9〜10月にあり、大学は規則に基づき不正行為が行われた可能性などに関する予備調査を実施。その結果、外部有識者が参加する調査委の設置を決めたという。
学術論文は、既存の論文にはない内容の新規性が重視される。自身の研究成果であっても、過去に発表済みのものを適切な引用なく再発表することは、研究業績の水増しにつながる不正行為とされている。
毎日新聞が入手した文書によると、副学長が参加する研究グループが20年間に発表した論文を研究者有志約10人が調査したところ、速報性を重視する「レター論文」や学会発表をまとめた「プロシーディングス」を含む23本は過去に発表済みの11本の論文から生み出されていたという。06年に国際学術誌に掲載された論文と、05年に日本の応用物理学会の学術誌に掲載された論文は「多少書き方を変えているが、(論文の)ストーリーも分析手法も共通で、最終的な結論も同じ」などと分析している。
毎日新聞の取材に副学長は代理人を通じて「取材への協力はいたしかねる」、同大は「調査委を設置したのは事実」と回答した。
◇類似率34〜60%
毎日新聞は10月、副学長が著者を務めた00〜06年の論文5本で、別の論文と文章の大半が同じだったり、図表が引用なく使い回されたりした疑いがあると報じた。
専門家の協力を得て、論文の類似度をチェックするソフトで解析したところ、類似率は34〜60%に上り、同じ文章が掲載されている論文や、引用のない図表の転載も確認した。研究不正に詳しい専門家は、内部告発した研究者有志がまとめた調査結果の内容を確認した上で「類似度が30%を超える論文は内容の重複が著しい。図表の使い回しも問題だ」と指摘した。
論文を掲載した複数の海外出版社も調査を進めている。副学長は、8月下旬に出版社側から指摘を受け、06年の論文の訂正を依頼したと明らかにしている。【鳥井真平】