塾経営の男には性犯罪歴があった、知っていたら… 娘が被害の保護者悲痛 「塾も確認対象に」日本版DBSで訴え
中国新聞デジタル 2024/1/28(日) 9:02配信
「塾を経営する男から娘が性被害に遭った。男には性犯罪歴があった」。学習塾の性被害対策を伝えた「こちら編集局です」の記事を掲載後、広島市内の60代男性から悲痛な声が寄せられた。性犯罪歴は男の公判で判明したという。男性は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認する「日本版DBS」制度の導入に当たり、塾関係者も対象に加えるよう訴えている。
「信頼して預けていたのに、性欲を満たすために娘を傷つけられた」。男性は昨年末、男に言い渡された有罪判決の通知書に改めて視線を落とし、声を震わせた。
男性によると、高校生だった娘は2018年秋、男が経営する個別指導塾へ入った。男は急に怒鳴ることもあるが、従順な生徒には優しく接していたという。男性は「娘とは絶対的な主従関係だった」とみる。
最初の被害は3カ月後。胸と下半身をトイレで撮影するよう命じられた。「あなた以外もやっている」と言われ、断れなかった。翌月には二人きりの教室で裸にされて上半身を触られ、動画を撮られた。塾をやめたいと言うと、「画像をばらして恥ずかしい目に遭わすぞ」と脅された。
男性は間もなく娘から被害を打ち明けられ、警察へ駆け込んだ。男は逮捕され、広島県青少年健全育成条例違反罪で起訴された。
公判では、男が過去に女性への乱暴で実刑判決を受けていた事実が明らかになった。男には有罪判決が出たが執行猶予が付き、今も男性と同じ区内に住む。
娘は事件後、「広島から離れたい」と県外の大学へ進学した。男性は「性犯罪歴を知っていたら、あの塾に通わせることはなかった。娘を守れなかった」と、自らを責め続ける。
男の塾は、知名度のある大手業者とフランチャイズ契約を結んでいた。大手業者は、中国新聞の取材に対し「契約時にセクハラに関する誓約書を交わし、インターネットでも犯罪歴の有無を調べた」などの説明に終始し、業者によるチェックの限界も見えた。
性被害を防ぐため、政府は「日本版DBS」制度の導入を検討している。性犯罪歴をデータベース化し、雇う側が事前に確認する仕組みだ。
ただ、昨秋に有識者会議が示した報告書では、学校や保育所に確認を義務付けたものの、学習塾などは「任意」とした。男性は「塾も対象になれば確実に被害は減る」と拡大を求める。一方で報告書は、加害者の更生に配慮し、性犯罪歴を確認できる期間に上限を設けるべきだとしている。