元中学校長からの性被害、元女子生徒に立ちはだかる「時効の壁」 争点は動画の映像 法廷から
産経新聞 2024/12/8(日) 19:30配信
当時中学生だった教え子に性加害したとされる元中学校長の男の裁判員裁判が、東京地裁で開かれている。「教師と生徒」の立場に縛られ、長年被害を訴え出ることができなかった2人の20代女性。勇気を振り絞った相談により、10年近くたって犯行が明らかになったが、公判では、弁護側の主張する「時効の壁」が立ちはだかっている。
■10年越しの相談
「身勝手に好意を募らせて、けだもののような行為に及んでしまった」
元中学校長、北村比左嘉(ひさよし)被告(57)は11月28日の被告人質問で、被害者に対し、反省の言葉を口にした。
冒頭陳述などによると、被害女性の一人は中学生だった平成24〜25年ごろ、被告から校内で性的な被害を受けていたが、周囲には長年、黙っていた。意を決して打ち明けたのは10年ほどが経過した令和4年11月。東京都の第三者相談窓口に相談し、メールのやり取りや面談を重ねた。
報告を受けた警視庁は5年9月、被告が校長を務める中学校や自宅を家宅捜索すると、校長室の机の引き出しからカメラが見つかった。この女性が被告から性的行為を受ける様子だけでなく、平成22年に別の少女が、校内で性的行為を受ける様子も映っていた。
■「部の顧問」関係悪化恐れ…
準強姦罪の公訴時効(発生から起訴ができるまでの期間)は10年、けがを伴う準強姦致傷罪の公訴時効は15年となる。
検察側は、被害申告した女性が平成24〜25年に受けた性被害については時効の可能性などを考慮し起訴しなかったものの、22年の性的行為に対する準強姦致傷と、当時少女だった2人の女性の映像を所持した児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で、被告を起訴した。
今年11月20日に行われた初公判。検察側は冒頭陳述で、被告が22年6月、マッサージ名目で当時中学3年だった被害女性を呼び出して性的行為をし、その際に体の一部にけがをさせたと主張。進路指導の主任や部活動の顧問だった被告との関係悪化を恐れ、女性が「抵抗できなかった」とも指摘した。
これに対し被告は、2人の女性の映像を所持した罪については認めた上で、準強姦致傷罪については無罪を主張した。
弁護側は、性的行為をしたこと自体は認めつつ、女性は別の機会には誘いを断るなどしており、今回も拒むことができたとして「準強姦には当たらない」と反論。さらに、けがには診断書がなく、問われている準強姦致傷罪は成立しないとも訴えた。
■「炎症がある」
準強姦致傷罪で被告が追起訴されたのは、事案発生から13年8カ月後の令和6年2月。準強姦致傷罪であれば時効前だが、準強姦罪なら時効で、起訴が無効とされる「免訴」となる。
被害申告した女性への性的行為が起訴されていない以上、もう一人の女性に対する行為が仮に免訴となれば、被告が認定されるのは、児童ポルノの所持罪のみとなる。最大で無期懲役にも問われる準強姦致傷罪に対し、児童ポルノ所持罪の法定刑の上限は懲役1年、罰金100万円に過ぎない。
負傷の有無を証明する必要に迫られた検察側が注目したのが、被告が撮影した平成22年の動画だった。性的行為の前後で、女性の体の一部が変色したように見えることから、女性が負傷したと主張。証人として出廷した法医学者も「炎症がある」と証言した。
一方、弁護側は、負傷したとする証明は成立していないと反論した。
■よみがえる悪夢
今月2日、意見陳述で出廷した被害女性は、蓋をしようとしてもよみがえる悪夢のような記憶に長い間、苦しめられてきたと打ち明けた。中学時代も「耐え忍ぶのが最善」と考え、被害を訴えられなかったという。
もう一人の被害女性が相談に踏み切ったことで、ようやく明かせた性被害。被害申告した女性に「勇気を出してくれて感謝している」と述べる一方、「許すことはない」と、被告への怒りをあらわにした。
翌3日、検察側は懲役10年を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めた。判決は今月9日に言い渡される。(橘川玲奈)
中学校の校長が教え子の裸の画像を所持したとして逮捕された事件で、別の教え子に性的暴行をしてけがをさせたとして、警視庁捜査1課は29日、準強姦(ごうかん)致傷容疑で、東京都練馬区立三原台中校長、北村比左嘉容疑者(55)を再逮捕した。
「被害者を好きになってしまい、性的欲求を抑えられなかった」と話しているという。
再逮捕容疑は教師としての社会的立場を利用し、以前勤務していた中学校の女子生徒(当時)に校内で性的暴行を加え、けがをさせた疑い。
同課によると、マッサージを口実に女子生徒を呼び出していた。
同課が別の事件で校長室から押収したビデオカメラを解析したところ、この女子生徒が映る複数の動画が残っていたことから被害が発覚。女子生徒に聞き取りをし、9月25日に被害届を受理した。
当時、被害を訴え出なかったことについて、女子生徒は「皆に知られることで学校に通えなくなると思った」という趣旨の話をしているという。
北村容疑者は今月10日、三原台中の校長室で、別の女子生徒の裸の画像を所持したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕された。
逮捕後、複数人から相談が寄せられたといい、同課はほかにも被害者がいるとみて調べる。
練馬区は再逮捕を受けて、「被害に遭われた方に深くおわびする。今後厳正に対処する」とのコメントを出した。
東京・練馬区の区立中学校の校長の男が、元教え子の女子生徒のわいせつな画像が保存されたビデオカメラを所持したとして逮捕されました。
東京・練馬区立三原台中学校の校長・北村比左嘉容疑者(55)は、過去に勤務していた別の練馬区立中学校の女子生徒のわいせつな画像が保存されたビデオカメラを所持した疑いがもたれています。
警視庁は北村容疑者がこの学校内の一室で女子生徒にわいせつな行為に及び、その様子を自分のビデオカメラで撮影したとみて捜査しています。
警視庁によりますと、被害女性が去年11月に、教職員による性暴力の相談窓口に「過去にわいせつ行為を受けた」などと匿名で連絡したということです。この相談窓口は教職員の性暴力が相次いでいることを受け、東京都教育委員会が去年4月に開設したものでした。
その後、今年7月に練馬区の教育委員会が警視庁に相談し、事件が発覚。きのう警視庁が北村容疑者の自宅などを家宅捜索し、中学校の校長室の机の中からビデオカメラを押収しました。ビデオカメラからは画像だけではなく、複数のわいせつな動画も見つかっていて、警視庁は余罪を調べています。
取り調べに対し、北村容疑者は「勤務していた中学校の生徒を撮影したものです」、「下半身を触っている画像や裸が写っている画像が入ったビデオカメラを所持したことに間違いありません」と容疑を認めているということです。
また、動機については「撮影した当時、再び見ることがあると思って保存していました」と供述しているということです。