トランプのせいで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を素直に楽しめない…白人社会回帰で日本人が被る不利益

金曜ロードショー(日本テレビ系)で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作が放送され、過去のアメリカの描写が話題になっている。コラムニストの藤井セイラさんは「過去のパートでは、白人優位社会だった1955年がノスタルジックに描かれた。まるでトランプ大統領が理想とする過去を映像化したようだ」という――。 ■新・吹き替え版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を今見ると… 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(BTTF)が先日、Xでトレンド入りし、話題となった。BTTFといえば、誰もが知る大ヒット映画であり、タイムトラベルものの古典だ。 3部作の監督はロバート・ゼメキス。1985年の初公開から40年を記念して、かつて主人公・マーティ(マイケル・J・フォックス)を演じていた山寺宏一がドク(クリストファー・ロイド)を、新たに声優・宮野真守がマーティ役を担う。その新吹替版が金曜ロードショー(日本テレビ系)で3週にわたって放送されている。 いま改めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観ると、ジェットコースターのような展開の完成度に驚かされつつも、子どもの頃には見えなかった点に気づく。 BTTF第1作では、タイムマシンに改造されたデロリアンが、30年の時をさかのぼる。1985年から1955年へ。第2作でもいったん未来の2015年にスリップしつつ、後半は1955年に戻った。これはどういう意味を持つのか? 映画公開年の1985年、17歳の高校生・マーティはトヨタのハイラックスに憧れている。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれ、高度経済成長を遂げた日本が国際的に持ち上げられていた時代だ。当時の日本はものづくりの国としての存在感も高く、カシオやパナソニックの「イケてる」電化製品が小道具としてBTTFのあちこちに登場する。そして主人公の暮らす街で市長を務めるのは、黒人だ。 ■過去の舞台は、白人が富を占有していた「古き良き50年代」 一方、タイムトリップした先の1955年には、アラーム付き腕時計もなければ、シュガーフリーのコーラもない。テレビもやっと一般家庭に届いたばかり、便利な電化製品はまだまだ普及していない。 しかし、人々の目には希望があふれ、大家族みんなで同じ番組を見て笑い、今後さらに暮らし向きがよくなっていく、という期待に満ちている。鷹揚でのどかな空気が流れ、不動産の開発用地もたっぷりとある。 そしてハイスクールにはほとんど白人生徒しか出てこない。アフリカ系も、アジア人も、ヒスパニック系もいない。出てくる黒人といえば、堆肥の塊に「クセェ!」と喋るアルバイトがひとりだけ(彼は後に市長になるが)。他に登場するアフリカ系アメリカ人は、高校生のダンスパーティのための生バンドくらいだ。 白人のための世界がそこには広がっている。

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