第48回日本アカデミー賞の授賞式が14日、都内のホテルで行われ、「正体」の横浜流星(28)が最優秀主演男優賞を初受賞した。同作は吉岡里帆(32)の助演女優賞、藤井道人監督の監督賞を合わせ3部門で最優秀賞を獲得。作品賞は「侍タイムスリッパー」が受賞した。 名前が呼ばれると笑顔で立ち上がり、藤井監督、共演の山田杏奈(24)らと喜びを分かち合うように握手した。壇上に上がりブロンズ像を受け取ると「この受賞は『正体』の仲間たち、作品を愛してくださった皆さまのおかげです。心から感謝しています」と喜びを語った。 染井為人氏の同名小説が原作。日本中を震撼(しんかん)させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けるも脱走し、容姿を変えながら逃走・潜伏を続ける主人公を熱演した。 藤井監督とは10年来の付き合いで、長編映画では3度目のタッグ。横浜にとって藤井組で主演男優賞を受賞するのが悲願だった。 2020年の日本アカデミー賞は別々の作品で顔を合わせた。横浜は「愛唄―約束のナクヒト―」などで新人俳優賞、藤井監督は「新聞記者」で最優秀作品賞を受賞した。「そのとき自分は、心の底から喜び、一緒にこの場に立ちたいと思いました」と横浜は回想する。「正体」は、2人で企画を立ち上げ、4、5年間話し合いを重ねて公開にたどり着いた入魂の作品。「藤井組でこの場にいることに自分の中で大きな意味がある」と感慨深げにうなずいた。 先月贈呈式が行われた毎日映画コンクールでも「正体」で主演俳優賞を受賞。放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で主演を務めるなど、俳優として存在感を増し続けている。「毎日芝居のことを考え、大げさかもしれないですけど、本気で身命を賭す覚悟で向き合っています」と演技にかける強い思いを吐露。「若輩者ですが、映画業界のさらなる発展のために尽力してまいります」とさらなる活躍を誓った。(塩野 遥寿)