地下鉄サリン事件の発生当初からオウム真理教幹部らの逮捕後も被害者支援に力を尽くした人がいる。 「霞ケ関駅で爆発。200人倒れている」。元警視庁捜査1課の安東大介さん(65)は1995年3月20日、一報に耳を疑った。捜査本部設置のため、築地署へ急いだ。捜査員約300人の配置表を作成する作業は夜通し続いた。 5月12日、幹部に呼ばれた。着くと机の上に厚さ約30センチの書類。別件で逮捕されていた元教団幹部林郁夫受刑者(78)=無期懲役が確定=らの供述調書などで、松本智津夫元死刑囚=教祖名麻原彰晃=の地下鉄サリン事件への関与が記されていた。 逮捕状請求に必要な書類の作成を指示された。松本元死刑囚は16日に逮捕された。 担当検事の「被害者支援をして事件は終わる」との言葉に「最後まで見届けよう」と思った。被害者救済法の施行に向け、給付金の対象者約6千人の被害届や通院記録を一人で読み返してまとめた。金銭で癒えない遺族の心の傷や、負傷者の苦しみを思うと無念さが募った。