架空の事業計画で投資家から不正に金を集めたソフトバンク部長、脱税ビジネスに加担してしまったシンガポール在住の国際派税理士、会社の金を不正送金し、ビットコインに交換したソニー生命社員(*)……。経済犯罪で逮捕された人たちが語った「反省の言葉」。日本経済新聞出版の新刊『まさか私がクビですか? なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』から、ダイジェスト版でご紹介する。 * 肩書はいずれも当時 2022年当時、ソフトバンクのデジタル部門で統括部長を務めていた男が、詐欺を働くことになったきっかけは「隠れ副業」だった。 本来必要な会社への届け出をせず、ひそかに起業したのはその数年前のことだったという。蓄電池の卸売事業で歯車が狂った。不正に手を染めていた取引先があえなく経営破綻。男の会社は約1億5000万円の負債を抱えた。 窮地に立たされていたとき、年下のアパレル会社の役員と出会う。高級車を乗り回し、家賃が月100万円の豪邸に住む会社役員は「本業ではなく不動産投資で財を築いた」と語った。その会社役員から短期間で高配当が期待できる不動産投資案件に誘われ、飛びついた。 男は、架空の事業計画で投資家から金を集めることを思いつく。副業を手伝ってくれていた最も信頼する部下に資料作成を任せた。 ●ソフトバンクの会議室を利用 会社役員が集めてきた投資家に、ソフトバンクの会議室で事業内容を説明した。ソフトバンクショップ向けの店頭システムを入れ替えるという数年に1度の大がかりな事業で、つなぎ融資が必要になる。わずか数カ月で20%の配当が手に入る計算だ。ソフトバンクの事業だけに確実な支払いは疑いない……。大手企業のネームバリューは抜群で、3人の投資家からすぐに計13億2500万円が振り込まれた。 会社の名前で調達した資金を会社役員に送っていた男だが、約束の期日になっても配当金の振り込みはなく、ついに連絡も途絶えた。持ちかけられた投資案件は、実際は投資せず他の出資者への配当に回す典型的な「ポンジスキーム」だったと見られる。 身元を明かしていた男と部下は逃げられず、投資家から矢のような催促を受けた。男は弁護士とともに警察を訪れ、洗いざらいを白状。逮捕されて自己破産し、妻と離婚して会社も懲戒解雇された。 東京地裁は24年9月、男に懲役7年、部下に懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。 被告人質問で「できる限り被害者への弁済を続けたい」と述べた男。原資はどうするのかと聞かれるとすかさず、こう答えた。