「ハッキリ言います。私は無罪です」積水ハウス55億円詐取事件の“地面師”が獄中から衝撃告白《筆者に届いた13通の手紙》

ノンフィクション作家の森功氏は、昨年ある手紙を受け取る。それは「積水ハウス地面師詐欺事件」を引き起こしたとされる人物からのもの。手紙の中には、重大な告白が含まれていた。 ◆◆◆ 〈前略 森功殿 私はセキスイ地面師事件で主犯格にされたカミンスカスです〉 昨年4月25日消印の手紙は、そう始まっていた。東日本のとある刑務所から講談社に届き、私のもとへ転送された。改めて念を押すまでもない。差出人のカミンスカス操は、日本屈指の不動産デベロッパー「積水ハウス」が騙されたあの地面師詐欺事件で逮捕された人物である。それまで旧姓の小山を名乗っていたが、事件当時はカミンスカス姓に変わっていた。カミンスカスは2017年6月、東京・五反田にあった老舗旅館「海喜館(うみきかん)」を舞台に、事件を引き起こした。 捜査した警視庁捜査二課や東京地検は、カミンスカスを地面師グループの親玉と踏んで逮捕、起訴する。事件の被害額は、実に55億円に上った。史上空前の地面師詐欺といえた。当人は東京地裁、東京高裁、最高裁と罪を争ったが、懲役11年という長い刑期が確定し、現在服役中の身だ。 地面師といえば、昨年7月にネットフリックスのドラマ「地面師たち」がその犯行を描いて大ヒットした。以来、広く知られている。犯行グループを率いたハリソン山中役の豊川悦司をはじめ、ハリソンの右腕として登場する辻本拓海役の綾野剛ら、真に迫る俳優陣の演技が評判を呼んだ。わけても元司法書士の後藤義雄を演じたピエール瀧が相手の不動産デベロッパーを騙す場面で何度も言ったセリフ「もうええでしょう」は昨年の流行語にもなった。 積水ハウスの海喜館事件は、ネットフリックスのドラマのモデルといわれる。ハリソン山中のモデルが主犯格として逮捕、起訴された内田マイク、あるいはカミンスカス操といったところだろう。ドラマでは詐欺の舞台が古い寺院に変わっているが、現実の事件は老舗旅館である。 そんな本物の地面師詐欺グループの“頭目”が、なぜ今頃になって私に手紙を寄こしたのか。その理由は、私自身が事件摘発直後に『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社)を出版したからだろうか。もとより本を書くにあたり、カミンスカスへの取材は何度も試みたが、実現しなかった。まずはカミンスカスの書簡のさわりを紹介しよう。手紙は誤字脱字などを修正し、人名を一部仮名にしているが、文意は替えていない。

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